「何度言ったらわかるんだ!」
何度か同じことを聞かれたり、あまりにあまり基礎的なことを聞かれればそんな風に怒ってしまう人もいるのではないでしょうか。
そんなとき、「こちらを怒らせるために相手は言っているのでは?」なんてことを思う人もいるかもしれません。
そんなときに知っておきたい考え方があります。
その間違いは、悪意ではない
「ハンロンの剃刀(かみそり)」です。
ハンロンの剃刀とは、「無能で十分説明されることに悪意を見出してはいけない。」という考え方のことです。元々は「オッカムの剃刀」というオッカムという神学者が作った言葉があり、日本語の「反論」ではなく、ハンロンという無名の人物がその派生として作ったとされています。
この「ハンロンの剃刀」という考え方は、当たり前のように思うかもしれません。
例えば、交通事故にあったときに、相手は悪意を持って衝突したわけではないということです。もちろん、冷静に考えれば「そりゃそうだ。」とわかりますが、精神的に追い詰められていたり、焦っていたりするときには、ついつい相手がまるで悪意を持っていたかのように接してしまうことがあります。
「もしかして、こちらを困らせるために、わざとぶつかってきたのでは?」
と。相手が間違えたとき、ミスしたときもそうです。何度も間違えられると、つい「故意に間違えているのではないか?」と、ふと考えてしまったりすることもあるのではないでしょうか。
障害という個性が認識される社会へ
最近、「算数障害」やASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害)について考える機会が多く、そういった方と接する上でも・・・、そういった方じゃなかったとしても、どんな方にも個性はあります。このハンロンの剃刀を前提に物事と常に向き合っていくとよいと思います。
忘れ物をしてしまう、遅刻をしてしまう、つい覚えられない、集中力がない、これらもすべてわざとではないのです。
計算の間違いもそう、数字を覚えられないのも一つです。極度に数字が苦手なだけで、相手を困らせようと思っているわけではないのです。
やさしい世界になったらよいなぁ、と改めて感じます。
思えば、自分の理解からは遠い世界へもこのハンロンの剃刀という考え方が大切になってくるのかもしれません。「アメリカのとある組織はUFOを隠している。」などの、陰謀論もきっとそうで、悪意があって誰かが世界を裏で動かしていると信じてしまいがちですよね。個人的にはUFOには夢があるので、いてほしいですが(笑)
常に、「ハンロンの剃刀」を意識しながら、人とのコミュニケーションを心掛けていきたいと思います。
<文/堀口智之>