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グラミン銀行の凄さを数字で解説

私は昔からNPO活動に興味があり、山形大学に所属していたときから学生団体を立ち上げ、農家と学生をつなげるプロジェクトなどを運営してきました。

ソーシャルビジネスと言われる、社会的な課題を解決することを目的とするビジネス形態は昔から注目しており、その中でも「グラミン銀行」の取り組みは衝撃を受けたもののうち一つです。

 

グラミン銀行とは

グラミン銀行とは、貧困削減を目的として、土地を持たない農村の貧困層、主に女性を対象に無担保の少額融資を行っています。1983年にバングラデシュの経済学者であるムハマド・ユヌスが設立し、「マイクロクレジット」と言われる非常に少額の融資で、多くの貧困層の人たちを救ってきました。2015年には約900万人の人が融資を受けるというとんでもない規模に成長しています。

グラミン銀行設立のきっかけとなった一番最初の融資は、1976年に10人を対象に8000タカ(約1万円)の融資からはじまったと言われています。たった1万円でどのくらい救えたのか。きっと大きな可能性を感じたことでしょう。

貧困ラインは1か月574タカ以下。日本円にして、月収700円程度。かなり厳しい生活で、貯金という概念もほとんどありません。グラミン銀行加入前のアンケートでは、90%が貯金をしたことすらない、ということでした。貯金がないということは投資もできず、今の生活を何等か変えうる何らかの行動もできないということを意味します。

3000タカを借りて牛を飼い、5000タカ借りてミシンを買って服を作って売る。手工芸品を作ったり、鶏を飼い始めたり。融資から始まるビジネスはなんと500種類以上。

その投資があるからこそ、新たなビジネスが生まれ、収益が生まれ、「豊かさ」が出てくるのです。

しかし、本当にそこに返済はあるのか。グラミン銀行の凄いポイントは返済の仕組みになります。

 

グラミン銀行の返済の仕組みを数字で解説

まず、5人組を作る連帯責任負わせることで仕組みを作っています。自分だけの責任ではないのです。チームとしての連帯責任なのです。

実は、日本にも「5人組」という制度が江戸時代にはありました。治安維持、相互扶助の考え方を元に争議の解決や年貢を納めることなどお互いを監視させる仕組みはある程度機能していたと考えられています。チーム制にし、ルールをきちんと守らせることで、教育的な側面も同時に持つのがグラミン銀行の素晴らしい仕組みの一つです。(ただ、デメリットもあり、元々ものすごい貧しい方や支援を必要としている人はチームにすら入れてもらえないこともあったことから今ではこの5人組制度は行っていないようです。)

そして貸し出すお金の金利は20%。少し高めのように思えるかもしれませんが、「複利」ではなく、「単利」という仕組みにすることで、複利かつ返済遅延によって発生する莫大な金利によって膨れ上がった返済額を抑える仕組みは見事です。複利は指数関数的な変化なのですが、指数関数ではなく、シンプルな単利、ある期間が過ぎると、元本にある割合がかかる金額だけ付加される形式にしたことで、よりわかりやすくその仕組みを伝えることもできます。

「家族に繁栄をもたらすこと」「子どもを教育し、そして、子どもが教育費を確実に稼げるようにします。」などと定期的に集会で唱和する。よりよい豊かさを感じる生き方、資本主義の考え方、ビジネスの基礎知識を資金返済の中で学んでいく仕組みがあるのです。

そして、2006年にはグラミン銀行とムハマド・ユヌスはノーベル平和賞を受賞しています。

 

グラミン銀行はどのくらいの人を救ったのか

2015年の段階だと、約870万人のメンバーがおり、女性が830万人と、96%を占めています。累計融資額はなんと1兆1000億タカ(つまり、1兆3000億円以上)にもなっています。実は計算するとわかるのですが、1人あたりの融資額は約15万円です。日本円に直せば大した額のように思えないかもしれません。しかし、そのたった15万円で救われるのです。生活が一変してしまうのです。

返済率は98.37%。つまり、60人ちゃんと返す人がいて、返している途中・返していない人が1人程度と考えてみると、貧困地域でお金に困っているにも関わらず、返済がきちんと行われているということに驚きです。(皆さんだったらお金がない人に貸したらかえってこなさそう・・・と思ってしまうことも多いのではないでしょうか。)つまり、これが意味することは、借りたお金で利子を返しながらもきちんと運用ができているということです。

素晴らしい仕組みで感動します。その仕組みも数字でわかるとより実感がわかるのではないでしょうか。ぜひご参考いただけたら幸いです。

参考:グラミン銀行

<文/堀口智之>