新人の数字資料を確認するときは、単位が読めるか、何と比較しているか、結論を数字で裏付けられるかの3点を分けて見ます。計算が合っていても、集計期間や分母が違えば、そのまま比較できません。逆に、資料の不備だけで本人の理解不足や不注意を断定することもできません。
この記事では、OJTでそのまま使える問いかけと修正例を紹介します。以下の金額・企業の設定は、説明用に作成した架空のものです。
1.単位と桁をそろえる:数字に「何の数か」を付ける
資料Aには「売上12,000千円」、資料Bには「売上1,380万円」と書かれています。このまま12,000と1,380を比べると大小を取り違えます。まず、12,000千円=12,000,000円=1,200万円と換算します。同じ単位に直すと、Bの売上が180万円大きいことが分かります。
新人への質問は「桁をそろえて」だけで終わらせず、「この12,000は円、千円、万円のどれですか。表の見出しだけで読み手に分かりますか」と具体化します。元データの単位が不明な場合は、計算する前に作成元へ確認します。
金額は表の上に「単位:万円」と明記し、人数や件数と同じ列に混ぜないようにします。端数を丸めた場合は「四捨五入のため合計が一致しない場合があります」など、実際の処理を注記します。単位を統一する際に、必要な精度まで失わないことも確認してください。
2.比較の基準をそろえる:前年比115%と15%増を区別する
前年同月の売上が1,200万円、今年同月が1,380万円なら、計算は次のようになります。
- 増加額:1,380-1,200=180万円
- 前年比:1,380÷1,200×100=115%
- 前年同月からの増加率:180÷1,200×100=15%
「前年比115%」と「前年同月比15%増」は同じ変化を表します。「115%増」ではありません。表の列名も「前年比」か「増減率」かを明記します。計算の前に、分母の1,200万円を「比較の基準となる前年同月の売上」と言葉で説明してもらうと、式の意味を確認できます。
前年同月比、前月比、目標達成率は、基準にする数が違います。定義は前年比の解説も参照してください。比較元がゼロの場合は通常の増加率を計算できないため、増加額や新規発生という事実で説明します。
割合の変化は「ポイント」も確認する
売上シェアが20%から25%になった場合、差は25-20=5パーセントポイントです。一方、元のシェアに対する相対的な増加率は(25-20)÷20×100=25%です。どちらも正しい計算ですが、意味が違います。「シェアが20%から25%へ、5ポイント上昇」と書けば、比較の内容が明確になります。
3.結論を確かめる:「増えた」と「好調」を分ける
売上が15%増えたことから、利益も増えたとは限りません。値引き、原価、販売費などを確認していない段階では、「売上は増加した。利益への影響は未確認」と整理できます。また、売上増加が施策の効果かどうかは、売上の数字だけでは判断できません。
報告文は、例えば次のようにします。
今年9月の売上は1,380万円で、前年同月の1,200万円に対して180万円、15%増加しました。いずれも同じ店舗・税抜金額で集計しています。増加の要因はまだ特定できていないため、次に販売数量と平均販売単価を確認します。
この書き方なら、確認済みの事実と次に調べることが区別できます。先に「好調」という結論を決めて、合う数字だけを探さないことが重要です。
数トレ式に考える演習:シェアが上がれば売上も増える?
大人の数トレ教室は、身近な数字の理解から、情報の読み取り、仕事での活用へと段階を踏む学習方針を示しています。その方針を資料指導に応用した、本記事の演習です。
前年の市場規模が1,000万円、自社のシェアが20%。今年の市場規模が800万円、自社のシェアが25%だったとします。自社売上は増えたでしょうか。
前年は1,000×0.20=200万円、今年は800×0.25=200万円。シェアは上がっても、売上は変わっていません。割合を見たら、その分母と実額に戻して確認する、という練習です。これは実際の受講者の成績や企業事例を示したものではありません。
提出前の確認と、OJTでの振り返り
提出前には「出典と更新日」「単位と期間」「集計対象」「比較の分母」「結論と根拠」の5点を確認します。指導後は同じ資料の修正だけで終えず、数字を変えた別の例でも説明できるかを確かめます。
不備が繰り返される場合は、知識だけでなく、元データの定義、引継ぎ、作業時間、チェック体制も確認してください。OJTで扱う範囲と研修で補う範囲は、実際につまずいている工程から判断します。チームで学ぶ内容は、和からの数字力・データ活用の法人研修で確認できます。
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