面接で仕事に必要な数字力を確かめるには、実務に近い数字を示し、計算の手順、比較の前提、判断できる範囲を説明してもらう方法があります。暗算の速さや「数字が得意です」という自己申告だけでは、担当業務への適性までは判断できません。
この記事では、面接官が事前に準備する質問と評価の観点を紹介します。以下の課題と採点項目は本記事で作成した例であり、採用後の業績を予測する妥当性が検証された適性検査ではありません。
質問を作る前に、仕事で必要な数字力を決める
募集する仕事について「何の資料を」「どの道具で」「どの程度の精度と時間で」扱うかを整理します。営業報告、在庫管理、経営分析では、確認したい内容が違います。日常業務で電卓や表計算ソフトを使うなら、使用を認める課題も検討します。暗算自体が必要な仕事でなければ、暗算の速さを中心の採用基準にする理由は乏しくなります。
質問、制限時間、利用できる道具、追加説明の範囲、評価の観点は、面接の前にそろえます。米国人事管理庁(OPM)の構造化面接の説明も、共通の質問と評価基準を用いる方法を示しています。これは面接設計の参考であり、日本の採用に関する法的基準を示す資料ではありません。
質問1:売上が増えたことを、どう説明しますか
次の架空の資料を提示します。対象店舗・期間・税区分は同一とします。
- 前年同月:売上1,200万円、売上総利益率30%
- 今年同月:売上1,380万円、売上総利益率25%
最初の質問は「この資料から確認できる変化を説明してください」です。売上の増加額は180万円、増加率は180÷1,200×100=15%。前年比で表すと115%です。一方、売上総利益は前年360万円、今年345万円で、15万円減っています。
売上が増えたという説明は正しくても、『利益も改善した』とは言えません。さらに、ここで計算できるのは売上総利益であり、営業利益や最終利益ではありません。候補者が自発的に確認した点と、面接官の助言後に分かった点を分けて記録します。
質問2:判断のために、あと何を確認しますか
追加質問は「来月の打ち手を決める前に、何を確認しますか」です。販売数量、平均販売単価、商品構成、値引き、原価、対象店舗の変更など、複数の確認候補が考えられます。正解を一つに限定するより、何を知るための確認なのかを説明してもらいます。
例えば「値引きが原因です」という断定と、「値引きの影響を確認するため、商品別の単価と数量を見ます」という提案は違います。原因が分からない段階で、仮説として扱えるかも確認対象です。
質問3:過去の実績で、自分が担当した部分はどこですか
職務経歴書に「売上を20%伸ばした」とあれば、「比較期間と対象範囲」「本人が行ったこと」「チームや市場の変化」「計算の元になった記録」を尋ねます。実績の規模だけでなく、候補者が自分の役割と周囲の貢献を区別して説明できるかを見ます。
前職の顧客情報、個人情報、未公開の業績などを提出させる必要はありません。守秘義務に配慮し、数値を丸める、比率に置き換える、架空の課題で補うといった方法を取ります。
評価は「印象」ではなく、観察した行動で残す
本記事の課題なら、①比較の基準を確認した、②計算を説明できた、③売上と売上総利益を区別した、④不明点を断定しなかった、の4項目で記録できます。「自力で確認」「助言後に確認」「今回は確認できず」のように、観察結果を残してください。
これらを合計して全職種共通の合格点にするものではありません。職務との関係を先に決め、面接官同士で回答例を照合します。一度の失敗には、緊張、設問の理解、言語やツールへの慣れなども関わり得るため、必要に応じて別の課題や職務サンプルでも確認します。
数トレの考え方を、採用後の育成にもつなげる
数トレが示す、数字を理解し、情報を読み解き、仕事に活用するという学び方を、この課題では「計算する→意味を説明する→追加確認を考える」に置き換えています。面接の回答は、採否だけでなく、入社後にどの部分を教えるかを考える材料にもなります。
なお、数トレの数字力診断を、採用判断用として検証済みの検査とは位置づけません。学習のきっかけとしての利用と、人事評価は区別してください。入社後の育成設計については、和からの法人研修窓口で相談できます。
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