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数的思考力がないと感染しやすい?国際成人力調査分析1

社会人の3人に1人は小3程度の算数しかできない?

2013年、「国際成人力調査(PIAAC)」が行われました。

「成人なら持っていたい」というスキルを3つに分類し、「読解力」、「数的思考力」、「ITを活用した問題解決能力」をそれぞれ調査したものです。24か国(うち22か国がOECDに加盟)の成人16歳~65歳まで16万6000人を対象にした大規模な調査となりました。

この調査から

「社会人の3人に1人は小3~4程度の知識の問題ですら解けないのでは?」

など様々な結果が明らかになり、世界に多くの衝撃を与えました。

この調査結果は非常に興味深いものがたくさんあるので、いくつかその結果を取り上げる中で、分析と考察していきたいと思います。

調査結果がまとまっているものとしては、参考リンクにある書籍をご紹介していきたいと思いますのでぜひ興味ある方はご購入ください。(かなり分厚く読み解くのが大変ではあります。)日本に住む社会人のスキルの実態や世界の実態との比較がわかりやすくまとまっています。

 

なぜ成人力の調査が必要なのか

そもそもなぜ成人力を調査する必要があるのでしょうか?

皆が興味があるところとしては、「どのような能力があったら社会人として活躍できるのか」というテーマです。

では、そのスキルや能力を持っていたらよりよく生きれるということがわかったとき、子どものときにどのような教育を施したらよいのか、その方向性が見えてくるような気がしませんか。

それだけではなく、この「成人力」そのものが、国の経済成長など社会全体への影響をもたらすことが考えられ、まさに「国力の計測」といってもよいくらいです。

もちろん、お金がどの国も潤沢にあれば、その国力が最大化する成人力が皆が得られるよう、すべて完璧に教育すればよいでしょう。しかし、どの国も、財政がひっ迫しており、教育にかけるお金も限られる中で最大の成果を出さなければいけない状況です。

教育と、大人になってからの具体的な社会的成果との因果、関連性、相関の調査を定期的に行っていくことで、よりよい今後の教育の在り方が見えてくるのです。

 

大人版「PISA(学習到達度調査)」

子どもの国際的な学力調査としては、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)がおそらく日本国内で一番有名です。この調査は、義務教育修了段階の15歳を対象としており、教育政策の課題や、その効果を定量的に計測したものとして、各国の行政や教育・学習塾など教育関係者に大きな影響を与えました。

「日本の学力が相対的に落ちた。」とか「学力が上がった」とか言われるときはだいたいPISAの調査から判明していることが多い印象です。
(もしくは小学4年生、中学2年生を対象にしている学校のカリキュラムがどれくらい身についたか、習得したかを調査するTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)というものもあります。)

このPISAの大人版が国際成人力調査(PIAAC)だと思って頂けるとわかりやすいと思います。

 

数的思考力がコロナ感染にかかわっている?

例えば一つ。

読解力や数的思考力の「平均」だけで見てみれば、実は日本は非常に高く、世界的にも教育は非常にうまくいっていると言えます。(点数が高いという意味では。)

世界的に見てみると、特に「平均が低い」&「数的思考力はほとんどない人の割合が多い」国は何か国かあり、フランス、アメリカ、イタリア、スペインなんかはその代表格です。(もちろん、この「国際成人力調査」(PIAAC)はすべての国を対象にしているわけではありませんので一部の国です。)

この4か国でどうしても想起してしまうのは、すべてコロナウイルスによる感染者の被害が非常に大きいことです。

アメリカにいたっては、新規感染者は4月のピークから減少傾向だったのですが、6月に入ってから再び増加に転じ、ほぼ終息のめどはまだまだ立ちません。6月23日には約3万6000人もの新規感染者が発生しています。

日本国内ではまだ累計で18000人程度と考えれば、その2倍の人数が一日で発生していると考えると、あまりに規模が違いすぎます。比べているのは、累計、と、1日あたりですからね。

Coronavirus in the U.S.: Latest Map and Case Count(THE NEWYORK TIMS)より引用

特に、この4か国は、数的思考力の「レベル1未満」の割合が非常に高く、7.1%~9.5%です。日本と比べると圧倒的に高く、日本は1.2%と非常に低い割合になっています。参考までに、コロナをうまく抑えた韓国は4.2%となっています。

この「レベル1以下」というのは、問題例が出ておりますが、“値札に書いてある製造年月日が読めない。わからない。”というレベルです。

数的思考力 2.1 値札の問題【習熟度レベル:1未満,難易度:168点】より引用

そうなってくると、社会の情報はなかなか読み解けず、行動も変えられないと思います。まさに、社会人としてどのような行動が適切なのか、量的な判断軸を持っていないということだと思います。「なんとなく危険」とか「リスクがある」ということは把握はしていると思いますが。

知識は、行動を変える。教育は、知識を身に着ける。だから、教育こそが行動を変える。そう考えていけば、該当の4か国の多くの方が危険性の適切な把握がもしかするとできていないのかもしれない。だからこそ、自粛という形ではなく、強制的なロックダウンが行われているわけですが。

もちろんこれは一例にしか過ぎません。一つ一つの情報は、すべて人の数的思考力を通して、知識として蓄えられます。

数的思考力だけでなく、読解力やITを活用した問題解決能力の習熟度は、就業の機会をもたらし、賃金も高くなるという相関関係も確認されています。

さて、長くなってしまいましたので、またの機会に、この成人力調査の結果からわかることを分析していきたいと思います。

※ この仮説はあくまで適当な勘程度だと思ってください。感染拡大には様々な要素が絡んでいますし、時間推移における感染拡大の変化もこれから観測されていきます。今現在6月25日の感染者数トップ5の国は、アメリカ、ブラジル、ロシア、インド、イギリス・・・という形で、以前は上位にいたスペインやイタリアなどと順位が入れ替わっています。

 

参考リンク

<文/堀口智之>