こちらのブログ記事は、先日発売となった「数学ゴールデン第一巻」に掲載されているコラムになります。白泉社ヤングアニマル担当者様のご厚意により、掲載させていただけることとなりましたのでぜひご覧ください。
数学好きな私の失敗談をお話しましょう。女性とデートしたときのエピソード。
「どこに食べに行きたい?」
と聞いて、「どこでもいいよ。」というセリフ。これがまさか”落とし穴”だったとは・・・。見事にハマりました。
「どこでもいいよ。」と言ったなら、文字通り、どこでもいい、はずです。数学好きな私からすれば、「xに何を入れてもよい。」と問題文に書かれているようなもの。-1であろうが、πであろうが、1億であろうが、何を入れても文句を言われるようなものではありません。なんでもよい、としているわけですから、値を入れてから否定されるようなことがあれば、そもそも前提である問題文そのものがおかしいわけです。つまり、「xに何を入れてもよいわけではない。」というのが問題文としては適正です。
しかし、現実は、数学の問題のようにいきませんでした。私の提案、「ラーメン屋」はものの1、2秒で否定されました。どうしてでしょう。それは、今ならわかります。
「言葉」そのものを問題文かのようにとらえていたのですが、実際はそうではありませんでした。「言葉」の裏にある気持ちが大切だったのです。xを「言葉」とすれば、その言葉の裏にある気持ちは、関数f(x)でしょうか。xを、気持ち「f」によって変換したものになります。(しかも、どうやらこの気持ちとやらは時間が経つと変化します。時間の関数になっているのです。だから、f(x、t)の方がよいかもしれません。)
つまり、x=「どこでもいい。」なのですが、f(x)=「常識的な場所で、それなりにおしゃれで、おいしい料理が出る、ゆっくりと会話を楽しめるお店で食べたい。(ラーメン屋とかはありえない)」あたりが正解でしょうか。(私もいまだに正解はよくわかりません。)
これは女性との会話だけにもちろんあてはまりません。友人との会話、仕事での取引先とのやり取り、家族との会話など様々なシチュエーションで適用することができます。現実は、x=100 とシンプルに答えが出てくるものではなく、x=100 と出ているけど、違うかもしれないとゆるく考えておいたほうがよいことが多くあります。それを表現するのが、「関数」です。このように、数学の考え方を通せば、現実をより理解できるようになるのかもしれません。大切なのは、数学の考え方を現実に沿うように使うことです。
もちろん、私も人の気持ちはまだまだ修行中の身で大きくわかるわけではありませんが、xではなく、このf(x)に注目する。この気遣い一つで、ずいぶん人とのコミュニケーションがよりよいものになってきたように思います。ぜひご活用あれ!
さらにコラムを読みたい方へ
このコラムを掲載させていただいた「数学ゴールデン」単行本1巻が現在発売中です!もう一つのコラムもこちらの単行本内に収録されています。ぜひご購入頂き、ご確認ください。
「考えてもわからない」のが数学
というタイトルのコラムが掲載されています。数学の魅力・面白さが詰まっています。ぜひご購入いただき、ご覧ください。
漫画「数学ゴールデン」のおもしろさ
「数学ゴールデン」は、数学オリンピックを目指す少年少女の人間ドラマが織りなす数学漫画です。何より義務教育で学ぶだけではない数学への向き合い方も漫画の中でしっかり描かれており、「そうそう!わかる!」と共感の嵐(笑) つい読み込んでしまいます。くすっと笑えるギャグもたくさんあるところもとてもよいです。数学に一度はのめりこんだことのある人は共感するし、これからのめりこみたい人は引き込まれ、数学の面白さがよくわかっていない人には新たな発見と、「数学も実は人生と同じだった」・・・と気づける最高の漫画であると思います。
前回は、ヤングアニマルZEROの数学ゴールデンにこちらのコラム「2人は永遠の愛を誓ってしまってよいのか問題(「数学ゴールデン」単行本発売記念)」をブログに掲載させていただきましたので、併せてご覧ください。担当者様の懐の深さに心より感謝です。
参考リンク
・数学ゴールデン 1 (ヤングアニマルコミックス) (日本語) コミック – 2020/6/26
藏丸 竜彦 (著)
<文/堀口智之>