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キャリア教育で大切なのはマイナスを見ること

先日、中高生のキャリア教育カリキュラムのアドバイザーとして、とある会合に出席させていただきました。

「キャリア教育」、とても大切なテーマです。

「これから長い未来を、社会をどう生きていくのか。」

誰もが大人になっていく過程で、未来をどう生きるか、何でご飯を食べていくのか、どんな職業につくのか。あるいは、今考えている、就職しようとしている会社は、職業は本当に自分自身とマッチしているのだろうか。

将来なりたい仕事に対して、今の勉強を頑張っているけれど、本当に今の勉強は必要なのだろうか。

改めて将来と今とを比較し、見つめなおす時間は中学生、高校生には非常に大切です。私も中学生、高校生のときは、将来のことはほとんどよく考えていなかったし、わかってもおらず、そのツケが一気に大学生のときにきた気がします。

大学生時代には、今では一部上場となった某ベンチャー企業の創業1年目から1年間ものインターンシップを行わせていただきました。

 

なぜインターンシップを行ったのか

当時、私は山形大学に通っていましたが、本当に将来が全く見えず、突然始まった就職活動の波に圧倒されました。

一緒に遊んでいた仲間が突然スーツを着て、背筋をピッと伸ばして椅子に座りながら、自己分析をし出す。当時の自分には意味がわかりませんでした。というか、社会に出て働くことそのものの意味もよくわかりませんでした。

「なんとなくそうしなければいけない。」

「そうしなければ社会人ではない。」

なんて言われている気分で、斜に構えていた自分は、「絶対に就活はやってたまるか。」と決意を固くしました。結局3社くらいは受けたような記憶があります。もちろん、一次面接で落ちました(笑)

当時から家庭教師をしたり、コンビニなどでアルバイトをしたりはしていましたが、本当にごく一部の職ではあります。言われたことをやっただけのこと。

それが、社会全体に対してどう影響しているのか。自分が一人の社会人として生きていくときに、どんな方法でお金を得て、生きているのかイメージがわかなかったのです。

そこで決めたのは「休学」という手段です。でも、休学を決めただけで、何を具体的にやるかは何も決めていませんでした。

とにかく、社会を見る。目的は決まっていました。

友人たちと違う道を選ぶのはやはり辛いもの。人と違うということに悩みましたが、このまま大学生活を終われない。そんな焦りが休学に導いたものと思います。

そして、行ったインターンシップ。

まさに衝撃でした。自分が信じてきた価値観と全く違う世界がそこにはありました。

なぜ儲けるのか、儲けるために何をしなければいけないのか、ベンチャー企業として社会にどう貢献していくのか。セールスポイントは何か。競合優位性はどこにあるのか。上場とはどういうことか。売るとは何か。

数学や物理学だけしかまともな知識がなかった自分にはまさに毎日が刺激的で、衝撃の連続でした。「稼ぐ」ということの意味、そのビジネス辞書は自分の中には全くありませんでした。

朝から晩までひたすら仕事。とにかく仕事の日々で、給料も生活がギリギリで、コンビニ食と牛丼の繰り返し。気づけばいつも体調は絶不調。お腹もいつも壊してました(笑)

でも、「今、絶対にこの環境を逃してはならない。」そんな気持ちで食らいつきました。

とにかく学んだ1年間。

このインターンシップがやはり自分には、大きなきっかけだったように思います。まさに、「社会を知る」目的がおおよそ達成できました。

気に入らないことがあれば、ちゃんと自分の意見をぶつけて、(たいていは自分が間違っているのですが。)そこで一つずつ学んでいった気がします。ちゃんとわけのわからない私に誠実に向き合ってくれる、やさしい会社でした。

ちなみに、当時は、「インターンシップ」という言葉は大学にはなく、誰も知り合いでインターンシップというものをしている人がいませんでしたので、私は山形大学初のインターンシップ経験者(※特にベンチャー企業)だと思います。だから、インターンシップという言葉ではなく、「働かせてください。」と言いながら、段ボールを1個抱えて会社のソファーで寝泊まりをしだす。よく会社側もこれでOK出したな、と今になったら思いますが(笑)

堀口氏インターンシップ時(2006年)

 

マイナスを知ることが大事

今回の会議で、中学生、高校生に対してどんな教育がよいのだろうかと改めて考えました。

中学生、高校生が勘違いしていることとして、社会を「サービス」としてしか見えてないという問題があります。

見た目上とか、「キレイ事」が実は非常に多く、実際は泥臭い世界そのものですよね。

「昔話」を聞いている感覚に近いかもしれません。桃太郎の昔話は、桃太郎は桃から生まれたそうですが、実際のところ、

「桃から生まれたってどういうこと?」
「その桃は何なのか?何かの卵系?それは人間だったの?」
「隠し子?もしかして捨て子?」

などその実態を、実際にはどうなっているのかを知ることが大切です。一歩先を覗くのです。

鬼退治はいきなり行けるようなものではなく、様々な泥臭い修行をして、多少の切り合いもあったことでしょう。動物を手名付ける何らかの薬や特殊能力なんかもおそらくあったのではないかと推測します(笑)

そんな泥臭い世界を知るには、とにかく中に入ること、誠実にお互いが向き合う経験をすることが大切です。良い会社とは何か、本気で考えて、自分だったらどうするかを考えて、ぶつけること。でも、それを全否定されたり。その過程の中で、初めて、会社の仕組みが理想郷、空想上のものだけではうまくいかないことがわかるのです。

中学生、高校生がインターンシップをするなら、インターンシップを「サービス」として体験するのではなく、例えば、自分の思っていることをぶつけて、フィードバックをもらう。そんなキャッチボールができる、新たな価値観と巡り合う、そんな機会があるのであれば、より素敵だなぁと感じています。

社会から見える「表」だけではなく、「裏」が見える。

プラスだけのものなんてありません。必ずマイナスと共にある。

私が大切にしている価値観の一つです。

そんな価値観を思い出させてくれるひとときでした。

<文/堀口智之>