日本マクドナルド創業は、1971年。
マクドナルドを広めたレイ・クロックに認められた藤田田(でん)さんが45歳のとき、マクドナルド銀座一号店をオープンしました。
最初は売上がなかなか立たず苦労したようですが、1年後には1日の売上高日商222万円を世界記録を達成。
瞬く間に「マクドナルド」という概念が広がっていきました。それまではハンバーガーを食べるという文化がなかった中でまさに偉業と言えることです。
この藤田田さんは、強烈な数的思考を持っていたと言われています。
「数字に慣れ、数字に強くなることが、ユダヤ商法の基礎であり、儲けの基本である。もしも、金儲けをしたい、という気持ちがあるならふだんの生活の中へ数字を持ち込んで数字に慣れ親しむことが大切である。商売のときだけ数字を持ち出してくるのでは遅すぎる。」
「ユダヤの商法」より
元々、GHQでアルバイトを始めた学生時代に出会った軍人にユダヤ人がいて、そのユダヤ人から様々なビジネスのことを教わったと言います。そのユダヤ人は、同僚のアメリカ人から差別にされ、軽蔑されていたにも関わらず、その遊び好きな性格のアメリカ人の友人にお金を貸して、その利息をとって取り立てる。そして同じ給料では普通買えない車を購入して、乗り回す。
そんな強く生きるユダヤ人を見て、商売・ビジネスの秘訣を教わったと言います。
「ユダヤ人は暗算の天才である。暗算が速いというところに、彼らの判断が迅速であるという秘密がある。
「ユダヤの商法」より
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工場の係員が答えを出すころには、女子工員の数と生産能力や原材料費などから、トランジスタラジオ1台あたりの自分の儲けまではじきだしている。」
もちろん、ユダヤ人のビジネスの考え方そのものが優れていたことは間違いないでしょう。しかし「暗算の天才」でもあった、というのが面白いところ。
たしかに、計算のスピード感は重要で、データをもらって1か月かけて計算するか、3分で暗算して売上から経費と利益率を概算するかでは、決断のスピード感も変わってきますし、PDCAサイクルのスピードが変わってきます。
「暗算には別の利点もある。暗算に強くなるということは、頭の中で物事を論理的に明快に整理し、素早く結論を出すことができるということでもある。」
「勝てば官軍」P55より
まさにその通りで、暗算が速くなること自体には実はビジネスに直接的な意味はありません。暗算が速いことは前提であることが大事で、頭の中で物事を数字化し、それを「暗算」によって組み立てることによって初めて大きな価値観の転換が生まれます。
この引用させていただいてる書籍は、既に10年ほど前に読んでいたにも関わらず、改めてつい先日読んだところ、私堀口の言いたかったことが整理されたその文章に衝撃を受けました。
これが何を意味するかというのを実践するかは少し練習が必要、というより、習慣が必要です。
例えば、上記の「1日の売上高日商222万円を世界記録を達成」という文章を見て、それで「すごい!」と思うのか、「?」と思うのかの違いだと思います。
『1日の売上高が222万ということは、当時の営業時間はわからないけれど、例えば営業時間10時間とすれば、1時間あたり22万。平均単価400円とすれば、550人が来客したってことかな?ということは、約6秒に一人会計を終えているということ?すごい!(うちの店舗と比べて・・・)』
となるかどうかというのを具体的に語っているものと思います。
そして、そんな数的思考を操る藤田田さん強烈な価値観として、日本の戦後の復興の中で、高度経済成長を体感し、味わいながら培われたのでしょうか。ある一言に凝縮されています。
「勝てば官軍」
です。実は、藤田田さんの書籍のタイトルにもなっています。よく口癖のように言っていたと言われています。
正確には、「勝てば官軍、負ければ賊軍」です。
その言葉の裏を勝手に想像してみます。
「勝たなければ正義にならない。どんなに良いことをやっていても、人のためになると思ってやっていても、負けていては、正しいことにはならない。負けたら、「あいつはダメだ。」と思われる。だから、何があっても勝たなくちゃいけないんだ。」
そんな一種のあきらめの心と潔さを同時に感じるこの言葉に、藤田田の精神と、志を感じるのです。
参考リンク
・「ユダヤの商法(新装版) (日本語) 単行本」(amazonリンク)
・「勝てば官軍(新装版) (日本語) 単行本」(amazonリンク)
<文/堀口智之>