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若者の投票率があれば政治は変わるのか

若者が選挙にいっても勝てない理由

本日、2020年7月5日、東京都知事選の選挙日です。

今回は、選挙にまつわる様々な数字について明らかにしていきましょう。(今回の記事で全体的に参考にしているデータは2016年の東京都知事選と東京都の人口のデータです。日本全国ではありませんが、近似的にはあてはまっている問題だと思います。)

「選挙」の最大の問題の一つが、若者の投票率です。毎回、若者の投票率が話題になっています。

2015年のときの都知事選における年代別、年齢階級別の投票率を実際に見ていきたいと思います。

2015年都知事選の年代別投票率

やはり、20代の投票率が極端に低く30%代になってしまっています。この投票率が原因で政治がダメなんだ!なんて意見もありますが、実際のところ真実はどうなのでしょうか。数字で計算していきましょう。

18歳の選挙権獲得はシルバーデモクラシーからの脱却

2016年に、満18歳まで選挙権年齢が引き下げられたときには、「ついに若者が政治に参画した!」と認知が広がり、

「若者の投票権が拡大!」
「シルバーデモクラシー(少子高齢化が進む社会において有権者に占める高齢者の割合が増加していき、高齢者の政治への影響力が大きくなってしまうことを指します。)からの脱却だ!」

などと話題になりました。

しかし、どうでしょう。その具体的な、数値的なインパクトはご存知でしょうか。

実は、元々、2.0%くらいしかないのです。

2015年国勢調査より東京都の年齢別人口のデータより著者作成

18歳と19歳の人口を足しても、東京都の有権者の割合に対してたった2%しかないのです。

たった、2%では政治は変わりません。もちろん、この2%が全員世の中と全く違う投票をした変わるかもしれません。これはよくある勘違いです。

  • 「若者が全員●●党に投票したら・・」
  • 「若者が全員●●さんに投票したら・・・」

となりますが、現実はそういったことはほぼありません。今までの選挙のデータから見ても、統計学的に、そこまで極端になってしまうことは「絶対に起こらない」といっても嘘にならないと思います。

例えば、年齢別での内閣支持率や政党支持率をみても10~20%程度の違いです。間をとって最大15%と仮定して考えてもよいと思います。高齢者で100%支持、若者だと0%というものはないのです。(もちろん、そういった高齢者有利のわかりやすい政策が今後できたら別かもしれませんが。)あと、「投票しなかった層が全員●●さんに投票したら・・・」ということもありえないです。

18歳~19歳が選挙権を持つことによって、「人口比2%」の「15%程度の影響度」ですから、全体に対して「0.3パーセント」程度のインパクトでしょうか。ほんのわずかな影響があるかもしれない・・・という程度です。

 

若者の投票のインパクトについて

5年毎の国勢調査における人口から有権者の人数を割り出し、2015年の東京都知事選におおける年代別推定投票率グラフ(総務省より)からデータを引用させて頂きグラフを作成しました。こちらが年代別投票数から算出した全体に対しての年代別投票割合のグラフになります。

実際のところの投票割合から考えれば18~20代までは10.7%の割合しかない

わかりにくいのでもう少し大きな括りで考えてみましょう。

大きな括り、階級をもう少し広くとってみると傾向が見える

人生80年で考えたとき、40歳までが一つの折り返し地点と考えたとき、39歳までの投票割合がなんと26%と、1/4しかないのです。

また、60歳以上の人が全体の39%を占めています。50代まで入れれば全体の55%、過半数になります。若者が政治を決めているとはいいがたいのが現状です。

もちろん、人生経験豊富な人が政治を決めるのは大変すばらしいことですが、人は利己的な生き物であることは誰もが認めることです。一つ一つの決め事に「ツケ」がなければよいのですが、今の日本の借金は若い世代が返していくものであったり、若者(現役世代)2人がしっかり働いて高齢者1人を支えなければいけないという未来は既に来ています。ちなみに2014年で、既に現役世代2.2人で高齢者1人を支えているのが現状です。(※)

さらに、これから特に日本を長期的に、40年支えるのが18~29歳です。これからしっかり働かなければいけない層がたった11%しかその選挙を決めていないということに、少し切なくなってしまうのは私だけではないと思います。

 

ネット投票という可能性

「ネットで投票を行えば変わるかも・・・!」という声も少なくありません。

本日前澤さんが選挙に関してのアンケートをしており、ネット投票を行うことで、大きく投票率が上がることも考えられました。

選挙にいかない人の全体の約65%、全体の2/3がネット投票できるなら投票をすると答えているのです。(もちろん、Twitterは軽く返答できるところやTwitterをしている層は日本全体を反映していないことは明らかではありますので参考ではあります。)しかし、可能性があるように思います。

しかし、投票率が上がってしまうことは決していいことに思えない人は存在すると思います。今まで選ばれた人は、今までの投票制度、選挙制度というやり方で選ばれた人ではあるので、「投票しなかった人が投票してしまう」ことによって、不利になってしまう可能性もあります。(既得権益といいますが・・・)制度を変えるというのは、そういった考え方を変えていかなければいけないということではあるのです。

他、もちろん、「ネット投票」はWEBを通すことから、セキュリティの問題や本人確認の問題、自由意志を尊重できるのか、など検討材料も多く、莫大なお金と時間がかかります。現在、総務省で導入のための実証実験なども行われています。(※)

ネット投票を行ったらどこまで変わるのか

ネット投票を行えば、上記の通り、若者の投票率が100%になるということはありえないと思います(笑)

ではもし、このネット投票や何らかの制度改革によって若者及び、これまで投票がいかなかった層、投票に行けないが投票に行けるようになったとき、どこまでのインパクトをもたらすようになるのでしょうか。計算してみましょう。

しかし、若者の投票率が、最も投票率の高い70~74歳の約77%程度まで上昇する可能性もあります。仮に、18~39歳までの層がネット投票などによって投票率が75%まで上がったとき、約116万票もの表が新たに発生します。(あくまで都知事選における計算ですが、日本全体にも近似的には適用できると思います。)

まず、全体の投票件数が 692万件 から 808万票に増加します。
116万票のうち、最大15%程度の他の世代に対する意見の違いがあったとき、

116万票×15%=17万票程度

よって、全体に対してのインパクトは、

17万票/808万票 =2.1%程度となります。

これでも、決して高くないインパクトにはなりますが、元々得票率1%の政党が2.1%上昇し、3.1%になれば、印象は大きく変わります。

これから少子高齢化が即していく中で、高齢者の方の投票における重みも強くなっていく傾向は間違いありません。

数字的なインパクトという側面からは、まずはネット選挙の導入は必須のように感じています。まずは投票率が上がってもどうにもならない人口の差はあると思いますが、よりよい国の将来、未来に大きな一歩前進するのではないでしょうか。

今回の記事では、都知事選のみのデータで考えましたが、衆議院議員選挙、参議院議員選挙など国政選挙でもほぼ同様のことがいえると思います。

ぜひ選挙制度のみならず、皆さんと共にこれからの未来を数字で考えていきたいと思います。ぜひご意見あれば大人の数トレ教室Twitterなどでご連絡ください。

※ 上記の計算はあくまで単純化して考えています。若者以外の投票率が何も変化しない、人口分布も変化しないなど前提に考えていますが、単純化しないと計算が難しく、理解することの難易度が上がっていくためです。

参考リンク

  1. 東京都の人口予測(東京都の統計)
  2. 窮地こそ若者の根強い支持が頼りか「新ミックス・モード調査」で有権者の政治意識を探索
  3. 年代別推定投票率グラフ(東京都知事選挙)│東京都選挙管理委員会
  4. ネット投票で実証実験 総務省、在外選挙向け(日本経済新聞)
  5. 2025年、高齢者1人を現役世代何人で支える?(財務省)

<文/堀口智之>