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【起業×数字力】大切なことは、攻めないこと

私は、和から株式会社を2011年に設立しました。そこからずっと代表取締役をさせていただいております。起業、事業開始はその一年前の2010年です。

その起業から経営だけでなく、様々な仕事を経験しました。今でこそスタッフに任せている仕事も、最初は自分ひとりでこなしていました。経理、財務、広告・マーケティング、事務作業、サービス全体の設計や、人事系、書類選考から面接、採用のプロセス、本当にすべてを一人で行っていました。ほとんどすべてのプロセスで「数字力」が大切ではありますが、一番初めの「起業」というプロセスには、どんな数字力が必要なのでしょうか。

 

「起業」に数字力は必要ない!?

「起業」に必要な数字力を語る前に、まず起業とは何かを考えなければいけません。

「起業」とは、事業を創る仕事です。つまり、世の中に新たな価値を生み、それによって対価が産まれ、人の雇用を生み、それが新たな価値を創っていく。そういった新たなサイクルが全くないところに、ゼロからイチの仕組みを創っていく人のことだと思います。

では、事業を創る仕事の中で、数字力は必要でしょうか。

個人的な意見としては、事業を創るそのアイデアそのものには数字力は必要ないと思います。数字ばかり考えていては、発想が生まれてきません。

「●●をしないと儲からない。」
「●●人に向けたサービスじゃないと意味がない。」

そういう発想から新たな事業が産まれる・・・ことは私にはイメージしづらくあります。つまり、そのゼロイチ(0⇒1を創る)の中で、じつは数字力が前提ではありません。

まずは、「どんな価値を出したいのか。」を考えるのが大切なのです。

価値とは何か。それは、問題解決です。誰の、どんな問題をどのくらい解決していきたいのか。そんなプロセスの中で、事業が産まれていくような気がします。

気がします・・・というのは、事業が産まれる背景には様々な要因があり、一概に絶対にこれだ、というものはないと思います。私自身が事業を思いつくのは、問題解決が先になります。数字があとです。

 

では、起業に数字力はいらないのか?

いや、数字を意識せずに起業するのは極めて危険です。いつ落ちるかわからない橋を、落ちる底の深さを考えずに、わたるようなものです(笑)しかもその橋もどこにつながっているのかわからないという。

数字とは、現実です。数字ないところには妄想しかありません。具体的な計画に落とし込む作業が数字化であり、夢は計算を通して、初めて現実になっていくのです。

まずは、どのくらいの市場規模があるのかを考えてみましょう。誰も買ってくれない商品を作っても全く意味がありません。誰も買ってくれないのであれば、「起業」ではなく、「趣味」になります。だから、誰かがお金を出して買ってくれる商品・サービスを創らなくてはいけないのです。

「●●円の商品が●●個売れたら、●●円の売上になる。そして、経費を差し引けば利益は●●円になる。だから、事業を継続できる。」

基本の計算はこれだけです。これだけの数字でよいのです。数字を用いた具体的な計画を、計算しながら立てていくのです。

でも、こういう計算は、起業に必要な数字力ではありません。一番大切なことが抜けてしまっています。

 

起業における数字力の一番大切なこと

実は、起業するに一番大切なのは、「最悪の事態」を想定することです。
「ダメになったら、お金が無くなって破産する。」
も一つの選択肢かもしれませんが、日本のように何度もチャレンジはしにくい社会であればやはり、なるべくギャンブル要素をできるだけ少なくすることが大切です。

例えば、一番のリスクが「お金が無くなって倒産すること。」であれば、
倒産しないようにするためにはどうしたらよいか。」
を考えるのです。

私は起業したときに、一番最初に考えたのは、
「お金が無くなって家が無くなって生きていけなくなること。」
が最大のリスクでした。なぜなら、当時年収65万円で本当にお金がなく、家賃もろくに払えていない状態でした。そこから起業したのです。

いかに減っていくお金を回避するのかが大切でした。つまり、一番大事なのは、売上の最大化ではありませんでした。売上高が高くなったとしても、お金が残るかどうかは別問題です。原価の割合がそれなりに高く、銀行からの借り入れなどもある。人も雇っている。良い場所を借りて家賃も高い。そして税金。思っている以上にかかる経費の中で、なかなか利益が残りません。利益が残らないことは、私にとっては死を意味するも当然でした。つまり、当時の私にとって一番なのは、売上高ではなく、利益の最大化だったのです。

よく、ベンチャーキャピタル(VC)や投資家から資金調達してIPOを目指してキャピタルゲインを・・・とか。もちろん、そういった起業はメディア受けや印象がよく注目されますが、私はそういう起業のやり方ではありませんでした。

あくまで特殊ケースかもしれませんが、上記は、周りの経営者を見ていても、これからの時代に即した考え方だと思います。起業の数字力は、経営でも原点は近しいものがあります。経営でも、リスクを回避し続ける仕組みをうまくつくることです。そこに照準を合わせて経営をしていくのです。

「ポジティブに、攻めの起業!」を考えている人は多いかもしれませんが、発想は逆です。実は、いかに「守りの起業」をするかが大切です。もちろん、「守り」を考えると、結果的に「攻め」が重要になる場面も多くあると思います。

起業の数字力とは、「守り」を考えることで始まる。

ぜひこれから起業する方、または副業したい方、フリーランスの方はぜひ参考にしていただけたのなら何よりです。

<文/堀口智之>