フェルミ推定とは、”よくわかっていない”量を求める際に、様々な情報を論理的に推論していき、ある程度の誤差を許容した上で導きだす手法のことです。
物理学者であるエンリコ・フェルミ(フェルミ粒子やフェルミ分布など物理学史に多大な業績を残している)が、学生に「ピアノの調律師は何人いるか?」と出題したのが一番最初だと言われています。
この「フェルミ推定」を使った方法は、考え方や話法、分析にも応用できることから、コンサル会社などの就職試験における面接等で出題されるようになりました。Googleでも面接時にこのような問題が出題されたことがあるとして非常に有名になりました。例えばこんな問題です。
・ジャンボジェット機の中にゴルフボールを何個積めるか?
・東京ドームを蛇口から出す水でいっぱいにするためには、どのくらいの時間がかかるか?
・地球上に蟻は何匹いるのか?
・1年間に地球に到達する太陽エネルギーはどのくらいか?
フェルミ推定で解いてみる
「ジャンボジェット機の中にゴルフボールを何個積めるか?」を考えていきます。
まずは、ジャンボジェット機の体積やゴルフボールの体積を推論で導き出すのです。導き出し方は論理的に出していきます。正確に出すのではありません。というか、実際にジャンボジェット機がどのくらいの大きさなのかがわからないし、乗ったことがない人は尚更でしょう。だから、ある程度あたりを付けて適当に考えていくのです。
仮に横幅が7m、高さ3m、全長50mで考えてみましょう。(おおよそ一席の横幅が50㎝程度が8席くらい、あと通路があったかな?とかそんな感じでよいです。)そして、直方体で考えましょう。わざわざ飛行機の形に合わせて円形で考える必要はありません。(考えてもよいのですが、誤差の範囲内です。)すると、1050立方メートルくらいの体積があることがわかります。
ここにゴルフボールを考えてみれば、片手で握れるくらいの大きさであったことを思い出すと、直径5㎝くらいと適当に考えてみれば体積は(4/3)×π×rの3乗でしたので、約65立方センチメートルでしょうか。
あとは割り算すれば求めることができます。
単位の変換のところだけ注意してください。1050立方メートルは、約10億立方センチメートルとなります。
10億÷65=1600万個くらい?
でしょうか。・・・いや、正確には違います。これは隙間なく埋めたときですので、実際はもっと数が少なくなるでしょう。球の3次元空間に充填させる割合の問題になり、おおよそ7割程度と考えれば、1600万の0.7を掛けてあげれば1100万個程度となります。
このように、論理的に限られた情報を推理していきながら何個くらい入るのかを計算していく考え方は見事です。
適当に求めてみても、こんな感じで答えが出てきます。しかし、これはあくまで概算です。
より正確な答えを出すためには、もっと精密な値と計算が必要となります。例えば、ゴルフボールは直径43mm程度とか細かい値を代入したほうがよいでしょう。さらに、「ジャンボジェット機の椅子の体積分はひかなくてはいけないの?」とか考え始めたらとてもじゃないですが、終わりません(笑)
ジャンボジェット機の大きさも、長さが実際は80mとかあるのでは?と考えてみれば、答えに既に約1.6倍も誤差が発生することがわかります。このように、誤差が発生すること自体を許して、概算するのがコツです。
フェルミ推定に期待すること
しかし、今、このフェルミ推定を、非常に残念に思っています。いわば、誤解されているのです。あまりに就職・転職試験対策の問題として知名度が高くなり、本来の目的が見失われています。
なぜなら・・・
とここまで長くなってしまったのでまた後日の記事でアップしていきます。
フェルミ推定の神髄を語ります。
お楽しみに!
<文/堀口智之>