今、「数学をわかる」だけを目標にすれば、様々なツール・やり方があります。
特に、「youtube」は一つの学びのツールとして非常に有効です。数学系でも、様々なyoutuberが現れ、いろいろな学びのコンテンツを提供しています。(受験数学系のコンテンツがいまだほとんどを占めています。)
しかし、youtubeでの学びの特徴として、いくつかデメリットもあるのできちんとわかった上で利用しないと大変なことになってしまいます。というのは、あくまでたくさん再生させることがyoutubeの目的であるからです。youtubeの収益源は広告収入です。広告を再生させることが大事で、それ以外はサブ的な要素になります。これが「学び」に影響してくることが考えられます。
youtubeで教育コンテンツを見るデメリット3選
次の動画を見るレコメンドの誘惑に耐えられないこと
まず、私も含めて耐えられないのは、多くの動画が個人の嗜好に合わせてレコメンドされ、動画を終えたらすぐに次の動画が再生される準備ができてしまうことです。自分に合う動画がこちらが特にボタンを押さなくても自動再生されてしまい、見るに心地の良いコンテンツがひたすらに放送され、気づけば数時間経ってしまっていた・・・というのは、youtubeを見たことがある人であればだれでも経験していることの一つです。もちろん、エンタメとして楽しむのであればそれはそれでよいと思います。しかし、学びを目的にするのであれば、時間あたりの習得量についてきちんと考える必要があります。
「エンタメ」度が高い動画が評価されること
決して深い学びを得られるコンテンツが評価される仕組みになっていません。学びとは、自分の脳内に新たな価値観を構成することであり、じっくり考える必要が本来はあることも、エンタメとして消化されてしまいがちです。3時間考えてわかることが、たった10秒で表現されてしまうことも。数学は、日常用語で比喩をすれば誰でもすんなり理解できます。しかし、それはあくまで比喩であり、本当の数学の姿ではありません。数式をきちんと追いながら、自分自身が頭の中で数式が組み立てられ、その数式が何を言っているかわかるには、たった数十分程度では到底無理だと思います。皆時間をかけたくはないのは同じなのですが。
なぜ、大学で4年ほど物理学や数学を学ぶ必要があるのでしょうか。それは深い学びには当然時間がかかるからです。しかし、エンタメ性の高い、わかりやすさだけに焦点を当てた比喩度の高い動画が中心に評価される(再生数が高くなる)傾向にあります。
間違っていることもあること
我々には思い込みがあります。「きっと再生数が多ければ(高評価が多ければ)間違いないだろう。」と。たとえ間違っていても、みんなで渡れば怖くない的な理論です。私も数学教育家として10年以上活動していてまだまだ未熟ですが、明らかに数学的におかしいもの、数学的には合っているけれど社会的評価からすれば絶対に間違っているもの・・というコンテンツが量産されています。(例を出したいのですが、特定の人の批判につながりかねないため、ここでは辞めたいと思います。気になる方は私に個別にお声かけください。)
例えば、「疑似科学」的なコンテンツも再生回数が数万回~数十万回を超える動画もありますし、その動画についているコメントでも絶賛の嵐だったりします。冷静なコメントはアップ者から消されてしまったり、なぜか残っていないということもあります。
つまり、その動画だけで間違っているかどうかを判断できないということです。合っているかを判断するのは、再生回数でも高評価の割合でもありません。(もちろん、ある程度は相関はあるとは思いますが。)その動画を信じるかは見る人にゆだねられます。
もちろん、これらのデメリットは、「youtubeじゃなければ解決できるのか?」というのも一つの視点としてありますが、どんな学び方を選んでもゼロじゃないにしても、youtubeには十分デメリットがある上でうまく利用いただくのがよいでしょう。
youtubeを学びとして活用するときの3つのコツ
あくまでエンターティメントとして消化すること。
深い学びを得るための教育コンテンツというよりは、エンタメとして楽しむことを前提に見ていくとよいと思います。
間違いがあるかもしれないものとして参考にすること。
いろいろな人の動画を見て、客観的にその人の言っていることが合っているかを判断したほうがよいと思います。(結局ものすごい時間と労力がかかりますが。)
最初の学びの一歩としてピンポイントに楽しむこと。
自分の全くしらない分野を学ぶには何を起点に学べばいいのかよくわからないことも多いかと思います。そういう意味では、確かに有効なツールです。最初の一歩は無料で味わえるので、とてもよいと思います。深く学んでいくには上記の通り、なかなか難しいところがあります。ぜひyoutube以外を頼ったほうがよいと思います。専門性をyoutubeだけで高めるのはほぼ難しいと思いますので当塾のセミナーや他のツールを活用してみてください。
以上、ぜひご参考にしていただけたらと思います。
<文/堀口智之>