転職先でデータ分析を任されたら、何の判断に使うか、いつまでに何を提出するか、どのデータを使えるかを最初に確認します。「最初の1週間は成果を出さなくてよい」と一律に考えるのではなく、必要な成果物と、前提確認に使う時間を依頼者と合意します。
この記事は、既存の業務データを使った初回の分析を想定した進め方の例です。実務の期限や権限に合わせて順序を調整してください。
1日目:依頼を、判断と成果物の言葉に直す
「売上を分析して」と言われたら、「減少の原因を調べるのか」「来月の施策を選ぶのか」「予算を見直すのか」を確認します。対象期間、比較対象、必要な粒度、利用する会議、期限もそろえます。
この日の成果物は、依頼内容をまとめた短いメモです。例えば「前年同月と比較して売上が下がった商品群を特定し、追加調査の候補を示す。原因の断定までは行わない」と、調べる範囲と限界を明記します。
2日目:データの意味と、扱える範囲を確認する
各列が何を表すか、1行が1注文なのか1商品明細なのか、どの条件で抽出されたデータかを確認します。売上の計上日と受注日、顧客番号と契約番号などを取り違えないようにします。
閲覧権限、社外への持出し、生成AIや外部サービスへの入力可否も、社内ルールに従って確認してください。成果物は、列の意味、更新時刻、除外条件、確認担当を記したデータの説明メモです。
3日目:既存の数字を、一つ再現する
新しい分析を広げる前に、既存報告の主要指標を一つ、自分の手順で再計算します。一致しなければ、期間、税区分、返品、除外対象、確定時刻などを順に確認します。既存報告が必ず正しいとは限らないため、無理に同じ数字へ合わせる処理はしません。
この日の成果物は、再計算の結果と差分の説明です。「合計は一致したが、返品の扱いは未確認」のように、確認できた範囲を記録します。
確認例:1行が何を表すかで、合計が変わる
以下は架空の注文データです。注文Aには商品明細が2行あり、各行に注文総額1万円が表示されています。注文Bには1行あり、注文総額5,000円です。
3行の注文総額をそのまま足すと2万5,000円ですが、注文単位の合計は1万円+5,000円=1万5,000円です。注文総額が明細ごとに繰り返されているため、行の単純合計では二重計上になります。
反対に、各行に商品別の明細金額が入っているなら、その明細を合計します。列名だけで判断せず、データの意味と構造を確認する必要があります。
4日目:全体から内訳へ分け、仮説を作る
合計を確認したら、商品、地域、顧客区分、販売経路など、依頼の目的に合う切り口で分けます。区分が重複していないか、未分類のデータが落ちていないか、内訳の合計が全体と合うかを検算します。
売上の変化を数量と単価へ分解するなど、説明可能な範囲から進めます。相関や同時期の変化を見つけても、それだけで原因とはしません。この日の成果物は、主要な変化と、確かめるべき仮説の一覧です。
5日目:事実・仮説・追加確認を分けて報告する
初回報告は、完成した図表の枚数だけで考えず、依頼者が次の判断へ進める情報をそろえます。例えば、次のようにまとめます。
確認した範囲:対象月と前年同月の、同一定義の売上。
事実:売上減少の主な金額差は商品群Aにある。内訳と全体の合計は一致している。
仮説:商品群Aの販売数量の減少が関係している可能性がある。
未確認事項:欠品、販促変更、販売拠点の変更。
次の作業:営業・商品担当に条件を確認し、数量と単価を比較する。
原因を特定できていないことも、確認が必要な条件が整理できていれば重要な報告内容です。締め切りに間に合わない確認は、分かったふりをせず、対象と予定を伝えます。
数トレの視点:計算結果を、業務の言葉で説明する
数トレの、数字を理解し、読み解き、仕事で使うという方針を、分析業務に応用します。例えば「売上が8%減少」だけで終えず、「前年の同期間・同じ対象と比較した結果」「金額差はいくら」「どこまで確認済みか」を言葉にします。
この説明ができない場合は、手法を増やす前に、指標の定義や割合の基準を確認します。逆に、必要なツールの操作が進行を妨げているなら、その習得も初週の計画へ組み込みます。
最初の1週間の記録を、次回へ残す
元データの取得時点、集計条件、使用した式や処理、除外したデータ、確認先を残します。次回も同じ条件で再現できることが重要です。個人情報や機密情報の複製は、保存場所と権限のルールに従ってください。
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