設備投資の回収期間を見積もるときは、投資額に何を含めるか、年間の効果を何で測るか、どの前提を置いたかの3つを分けて書き出します。同じ設備でも、この3つの置き方が違えば回収年数は年単位で変わります。回収期間が短いことだけで、その投資が他の案より優れているとも言えません。
この記事では、単純回収期間の出し方と、稟議で問われる前提の書き方を紹介します。以下の金額・年数の設定は、説明用に作成した架空のものです。減価償却などの会計処理は、会社の処理方針へ確認してください。
回収期間は、何を分母に置くかで変わる
単純回収期間は、投資額を年間の効果で割った年数です。式は単純ですが、分子の投資額と分母の年間効果に何を入れるかで答えが変わります。分母を利益で置くのか、現金の増減で置くのかでも違う数字になります。
稟議で問われるのは、年数そのものより、この2つの中身です。数字を出す前に、含めたものと含めなかったものを一覧にしておきます。
年数の意味も先に共有します。回収期間は、投じた金額が戻るまでの長さを示すだけで、戻った後にどれだけ残るかは示しません。想定稼働年数が短い設備と長い設備を、回収期間だけで並べることはできません。
投資額に含める費用を決める
投資額は、設備の本体価格だけではありません。設置工事、既存設備の撤去、初期の教育、試運転の期間に落ちる生産量、初年度に必要な交換部品。どこまでを投資額に入れるかを先に決めます。
含める範囲を広げると回収年数は長くなり、狭めると短くなります。どちらが正しいというより、社内で同じ範囲にそろえて比べることが必要です。過去の稟議で使った範囲を確認し、それに合わせます。
年間の効果を、現金の増減で見積もる
年間の効果は、出ていく現金が減る項目と、入ってくる現金が増える項目に分けて積みます。外注していた加工を内製に変えるなら外注費の減少、不良の廃棄が減るなら材料費の減少、生産量が増えて売れるなら売上の増加です。
ここで、効果を見込みで大きく置かないようにします。生産能力が増えても、売れる見込みがなければ現金は増えません。売上の増加を効果に入れる場合は、受注の裏付けを併せて書きます。見積もりの桁をそろえる考え方は概算力の用語解説で確認できます。
効果の項目は、誰が数えるかまで決めます。外注費の減少なら購買の担当、廃棄の減少なら品質の担当というように、記録の出どころを書いておくと、導入した後で見込みと実績を突き合わせられます。
計算例:単純回収期間を出してみる
説明用の架空の例です。本体500万円、設置と初期教育に100万円かかる設備を導入し、年間で外注費が120万円、不良の廃棄が30万円減ると見込みました。
- 投資額:500万円+100万円=600万円
- 年間の現金増加:120万円+30万円=150万円
- 単純回収期間:600÷150=4.0年
年間の効果を150万円ではなく100万円と置き直すと、600÷100=6.0年です。効果の見込みが50万円、率では 50÷150×100=約33.3%下がっただけで、回収年数は2.0年動きます。前提を1つ変えるだけで結論が変わるため、年数より前提の一覧を先に示します。なお、回収期間の短さは、その設備が必要かどうかの答えにはなりません。
時間の削減を、現金の削減と区別する
作業時間の削減は、そのままでは現金の削減になりません。月40時間かかっていた作業が20時間になれば、年間で 20×12=240時間の削減です。ただし、その担当が同じ部署で別の業務に移り、残業も外注も減らないなら、支払う現金は変わりません。
現金の削減に数えてよいのは、残業代が実際に減る、外注に出していた分が減る、予定していた増員を取りやめられる、といった場合です。それ以外の時間削減は、回収期間の分母に入れず、別の効果として一行で書きます。
稟議で問われる前提を、先に書いておく
前提は、質問されてから答えるのではなく、資料に先に並べます。並べるのは、投資額に含めた費用の範囲、年間効果の内訳と根拠、設備の想定稼働年数、効果が出始める時期、効果が見込みより下振れした場合の年数です。
下振れの年数は、効果の見込みだけを下げて計算します。先の例なら、効果150万円で4.0年、100万円で6.0年という2つの数字です。幅を添えると、年数が動く条件を先に共有できます。
前提を書き出しておくと、質問が減るだけでなく、承認された後の確認もしやすくなります。1年後に、置いた前提と実際の数字を並べれば、次の案件の見積もりを直す材料になります。
稟議に出す前の前提の並べ方を確かめたい場合は、和からのマンツーマンの数字トレーニングがあります。めやすとなる回数は、無料相談の場で見積もりとして示されます。ここで確かめられるのは前提の置き方と計算の筋道までで、投資そのものの可否は社内の規程と決裁者の判断によります。
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