先日、「大人の算数障害を考える」という算数障害(ディスカリキュリア)の記事投稿をしたところ、コメントをいただきました。
『小さい数から1、2、3と数えるの苦手です😥途中で次が何かわからなくなるんですよねぇ。学生の頃、100均でレジバイトしてて、商品の個数をカウントしながら数字を言うのが難しかったです。ブログを読んで、こういう特性を知る事ができて良かったです。数字を色で捉えている人がいるように、数字に対する概念て人それぞれなのかもしれませんね。』
もちろん、大人の方です。やはり数えるのも苦手な方はいるけれど、それをなかなか人に言えなかったりするんですよね。
ということで、今回は、ゲルマンの数え方5原則(計数の5原理ともいわれる)というものをご紹介します。
幼児や子供がどのように数を認識し、習得していくのかという流れで生まれた考え方です。人は生まれつき、数を認識することができるようですが、習得にはいくつか段階があるのです。
数えかた5原則
1.一対一対応
2.安定した順序
3.順序の非関連
4.基数性
5.抽象性
Gelman & Gallistel (1978)
それぞれご紹介していきます。
1.1対1対応とは
モノと数字を一つ一つ対応させていくことです。みかんが3つあったら、それぞれ、1つ目のみかんと「1」を対応させること。2つ目のみかんと「2」を対応させ、3つ目のみかんと「3」を対応させることです。
2.安定した順序
モノを数えるときに、数字の順番がきちんと並んでいることです。「いち、に、さん、よん、ご・・・」など。「いち、にー、ごー」などなってしまうと安定していない順序とはなります。
3.順序の非関連
モノを数えるときに、右端から、とか、左端から、あるいは真ん中から・・・など、どんな順番で数えていっても同じ個数であることがわかることです。同じものを複数回数えたり、数えないものがあったり、正確に数えるときにはとても大切です。
4.基数の原理
量が数字と結びつくことです。モノを数えたときに最後の数字がモノの量、数と一致するこが理解できていることです。
5.抽象性
例えそのモノが何であったとしても、すべて同じ原理が使えることです。みかんでもリンゴでも、あるいは、お金でもなんでもモノを数えるのであれば、上記の法則が成り立ちます。
こういったゲルマンの数え方5原則は、義務教育を終えた社会人であれば(終えていなかったとしても・・・)基本的にマスターしているはずです。これができなければ、生活はできるにはできると思いますが、ちゃんとした自己責任の下、日常や仕事で数字でコミュニケーションすることなどには難しさを感じることもあるかと思います。お金も数えることができませんので。
数えることから大切にする
もちろん、これらを習得していたとしても、これらの考え方はとても大切なものです。
数学の世界も、突然モノがモノのように見えなくなってからは、つまり、抽象化が進んでしまうと、上記もよくわからなくなってしまうことがあるからです。
りんごだったら具体的にわかります。でも、「a」とか「γ」などのギリシャ文字、「a_n」といった数列でも同じように扱ってよいとしたとしても、初めて見る方は混乱することでしょう。
だから、数えることは「簡単である」とも言い切れないと思います。
もし数えることがわかっている人は、
「大人でも、数えることでも苦手な人はいるんだ。もしかしたらうまく数えることができない人もいるかもしれない。」
わかっていない人は
「もちろん、算数障害かもしれない。でも、コミュニケーションできるように、できることからで大丈夫。わかるように少しずつ努力する。」
そんなことを前提に、やさしい社会を、一人ひとりが意識していきたいものですね。
<文/堀口智之>