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大人の算数障害を考える

算数ができないという障害は、ある

「なぜか数字がわからない。読めない。」

「量が感覚的に把握できない。」

「何度やっても、筆算がわからない。」

実は、大人でもたくさんいます。義務教育を受けてきたんだから・・・という意見はありますが、教育を受けてきたとしても、わからないのです。

実は、知的発達やコミュニケーションなど、他の科目はある程度できるのに、「算数が極端にできない」という算数障害(ディスカルキュリア(Dyscalculia))は、約5~7%の割合で存在する(※1)と言われています。読字障害(ディスレクシア(Dyslexia))と同じ程度の割合いると推定されています。(社会人の算数障害の割合についてもおそらく同程度だと予想されます。)

つまり、14~20人に一人は算数や計算が極端にできない人が存在するということです。

筑波大学の熊谷先生によると、算数障害に具体的にどんな内容があるのかと言えば、以下4種類に分類できるということです。(※2)

■算数障害の内容(熊谷 ,2013)
数処理:数の大小比較や操作・数の読み書き
数概念:序数性と基数性
計算:四則演算の暗算(数的事実),筆算(手続き)
推論:文章題を解く

数処理とは

数処理は、数字の認識ができるかどうか、読めるか、書けるか、大小が判別できるかどうか。桁を間違えても特に気づくことがない。などと考えていただけるとよいと思います。

数概念とは

数概念は2種類に分けられ、序数性と基数性は、専門用語なので少し難しいのですが、序数性は、数字の順序、順番の考え方のことです。1個、2個、3個、4個・・・と数える力です。

基数性というのは、具体的な量のことです。数直線を読み解く力、四捨五入を利用した概算は序数性ではなく、量の概念が必要です。その量概念を体感的にわかっているかどうか。その具体的な量を数字と紐づける力と考えてもよいと思います。

英語だとわかりやすく、
序数:first, second, third・・・
基数:one,two,thee・・・

となります。

計算とは

計算とは(特に説明もあまり必要ないと思いますが、)足す、引く、掛ける、割るという四則演算を行う力、暗算する、筆算する力です。

推論とは

推論とは、文章題を解く力です。文章題を読んで、その内容を明確に絵や図に書き起こすことができなかったり、答えを導き出す数式が立てれないということです。

 

算数ができない社会人の認知を広げたい

この大人の数トレ教室にも、計算障害と思われる方も通うことがあります。(もちろん、弊教室は医療機関ではありませんので、判断でこちらではできませんが。)もちろん、程度が人によって大きく異なります。人によって九九や繰り上がりのある足し算、「7+6」などで既に難しいと感じる方もたくさん通っていますし、もっとできる方、経営者として活躍していて、普段から数字を活用されている方も通われています。

社会人に焦点を当てた「算数障害」については、それほど研究も多くなく、大人の方でも算数障害という方がいるということを、社会がもっと認知すべきだと思っていますし、我々がなんとかその社会的な問題についてきちんと取り上げる必要があると考えています。

なぜなら、数字がわからない能力を持っている人が実は世の中にたくさんいて、それが原因で、様々な支障が起こっているにも関わらず「ちょっと計算が苦手な人」、「数字に対する努力が足りない人」などとして認識されてしまっており、課題解決の糸口も具体的にないまま放置されてしまっているからです。

身近な事例でいえば、ニュースで「数字」を出せば、多くの人がきちんとその数字で社会を読み解けているか、あるいは、ビジネスを読み解けているかと言えば、全くそうではないと思います。

「●●という企業が売上が30億円下がりました!」

となったとき、「やばい!」と思う人もいると思いますし、「?」と思う方もいるはずです。元の売上がわからなければ、30億円のインパクトがよくわからないからです。なぜなら、計算方法は学ぶけど、売上などの比較に対しての実践や、具体的な量に対しての実感や感覚みたいなものについては、子どものときに学習を行う機会が決して多くないのです。

もちろん、お金の教育が必要とか、IT・プログラミング教育が重要であるとか、アクティブラーニングの実践とか、そういった時代の流れであることは前提の中で、一人ひとりの生きる力を養う、リテラシーをきちんと学ぶ教育(アダプティブラーニング)であることが最も重要です。教育は子供だけのものではなく、大人も学べる場所があり、学び続けられる土壌、文化が日本には必要です。

10年前に立ち上げた「大人のための数学教室和(なごみ)」では、数学が学びたい人の救いの場になっているであろうと思います。算数から大学レベルの数学や統計学までしっかり学べる個別指導、セミナーを行っている教室です。しかし、「算数」や「数字」に対するもっと大きな社会のムーブメントを起こさなくてはと思っております。

英国の大規模コホート研究によると、数的思考力(numeracy)が低いことは、識字能力(literacy)が低いことよりも、個々の人生の様々な選択肢や可能性に対するハンディキャップがあることがわかっており、収入は少なく、支出も少なく、病気になりやすく、法律的な問題をも抱えている可能性が高いと言われています。(※3) 

算数障害の判定項目

算数障害の判定方法について、参考リンクも貼っておきますが、こちらの資料が非常に有用ですのでぜひご活用ください。

日本LD学会研究委員会(2014)の資料から作成されているとのことです。(※2)

引き続き、大人の数トレ教室で算数障害の情報発信を続けていきたいと思っています。

 

参考リンク(※)

  1. Dyscalculia: From Brain to Education(PDF)
  2. 算数障害とはいったい?(熊谷恵子)(PDF)
  3. Number developmentand developmentaldyscalculia

<文/堀口智之>