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分子・分母がわからなくなる症候群の方へ

どっちで割ったらよいかわからなくなる人へ

「どちらで割ったらをいいのか。」

「どっちを割るのかわからなくなってしまう。」

毎回セミナーをすると、必ずと言っていいほどそんな声を耳にします。もちろん、子どものときに、比べる量、比べられる量、元になる量、などそんな割り算の用語を学んだ気がします。でも、忘れてしまった。そんなときはこれだけ覚えてください。

分母が「基準」。

実は、これだけで十分です。

割り算の本質は、比べること

そもそも割り算の本質は、比べること、比較することです。
比べるというのは、何かに対して何を見るということです。

例えばこんなセリフ。

「あの人、面白いなぁ。」

という一言は、どんな意味を持っているでしょうか。「?」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、意味をよく考えてみるのです。

すると、「あの人」が面白いという情報は、どこかに「面白くない。」という人がいるからこそ、あの人のことを「面白い。」と比較して言っているわけです。つまり、他の人、例えば「自分」が基準にあって、その自分に比較していたら、あの人は面白いと言っているわけです。

つまり、知らず知らずのうちに我々は相対的に物事を見ています。相対的とは、「絶対的ではない」ということです。絶対的という言葉は、何も比較しない、そのままの数、量のことを言います。

 

相対的とは

例えば、テストの点数が80点と聞いたら、「高い!高得点!」と思う人もいるでしょう。でも、平均点が95点と聞いたらどう思うでしょう?

きっと、「低い」と思うはず。それもそのはず、ふつう、80点は平均点よりも高そうな点数だからです。80点が価値があるかどうかは、他の人が何点だったのか、その比較によって決まります。

「95点に比べたら、80点は低い。」

この比べることを用いた表現は、そもそも、95点を「基準」に考えています。95点に対して、80点が低いと言っているのです。

80点という情報だけであれば絶対的、だったでしょう。しかし、今、平均と比べることによって、まさしく相対的に物事を見ている状態です。だから、数式で言えば、

80点÷95点=80/95=約0.84

となります。この「0.84」がどういう意味を持つのかと言えば、95点という基準となる平均点を「1」としたときに、「0.84」という意味です。そもそも、基準とは1にして考えるということです。1とは、100%のこと。つまり、80点は平均点からすれば、84%の割合であるということです。

このように、比率を求めることによって「比較」を定量的に把握することができ、分析の最初の一歩をきちんと行うことができるようになります。

 

昨年の売上の成長率を求める

社会人として、絶対に知っておきたい比較の一つ、分子分母がごちゃごちゃになってしまう事例を一つご紹介しましょう。

「売上高成長率」です。昨年度からの売上高成長率を求めるときに、どうやって求めるか。

それは、今年の売上が去年からどれくらい成長したかを知りたい、ということですので、去年を売上を基準にしてことしての売上高の割合を算出したいということです。だから、

昨年比売上=今年の売上高÷去年の売上高=(今年の売上高)/(去年の売上高)

として計算することができます。

よく数字が学べる書籍などを見てみると、この計算式から「-1」をすることがありますが、その理由としては、元の基準となる1からの変化分に興味があるからです。

1から大きかったら増加しているし、1より小さかったら減少しているはずです。「-1」をすることで、「昨年比売上高」ではなく、「昨年比売上高成長率」を求めることができます。

昨年比売上高成長率=(今年の売上高÷去年の売上高)-1={(今年の売上高)/(去年の売上高)}-1

前年が売上10億円で、今年が13億円だった場合、前年比売上高(昨年比売上)は、130%(1.3)であり、昨年比売上高成長率は30%(0.3)となります。昨年比売上高を略して、「昨対比」とも呼ばれたりもします。

 

割る数を迷ったときには

もし、どちらで割ったらよいか、どっちを割ったらよいかわからなくなったら、「基準」がどちらかを考えていただき、分母を基準にする、ということだけを覚えていただければ、割合を算出することができます。

覚える量をなるべく少なく、賢く、数式を活用することでよりよい算数、割合ライフをお送りいただけたら何よりです!

<文/堀口智之>