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どんな数学が企業で求められているか

数学は企業で求められているか?

あるレポートを共有したいと思います。

会社でどんな数学が求められているか、そのニーズがわかれば、数学教育にもつながってくるはずです。

2004年の調査結果で、今から15年以上も前ではあるのでどこまで信用できるかというのもありますが、参考には確実になります。

どんな数学の分野が企業でどのくらい求められているか、という結果がわかりやすく可視化されています。

調査方法は、郵送でのアンケート調査。上場企業の約400社からの回答があったそうです。まず、上場企業からの回答ではあるので、ごく一部のみ、ちゃんとした会社からの回答という形になります。(上場している会社はすべての会社の0.1%程度しかありません。)

こんな質問をされたそうです。

「あなたの会社の社員が仕事をする上で次のようなことを小・中・高等学校の算数・数学で学習することは大切でしょうか。」

この質問に対しての4つの項目を選んで回答します。

1.大切である
2.大切でない
3.特に大切な部課・部署がある
4.答えられない

結果は以下のようになりました。

引用:企業の算数・数学教育への期待 : データに基づく予測の強調と指導法の改善(瀬沼 花子)

3位の論理的考え、4位の判断力、6位の簡潔に表現etc.は本当に数学の要素なのかはわかりません。純粋な数学の分野の部分だけを〇をつけてみるとこのようになります。

引用:企業の算数・数学教育への期待 : データに基づく予測の強調と指導法の改善(瀬沼 花子)を一部改良

「大切+特に大切な部署」の2つを合わせた割合での順番におおよそ並べられています。(正確には、「大切ではない」の割合の小さい順になります。)

赤の〇をつけたところから数えて、2位、3位が、「データに基づく予測」や「統計学」。今2021年は重要であることが当たり前になっていますが、実は当時から重要であったということがよくわかります。しかし、高校のカリキュラムでは、統計学を必修にするには至ってはいませんでした。(必修になったのは実質的に2022年~ということになります。)

重要であることはだいぶ前からわかっていたにも関わらず、なかなかカリキュラムの改変が進んでいないという現実もここあたりからわかります。なぜこれほど時間がかかってしまっているのか・・・。

あと、当たり前ではありますが、「数と計算」はやはり超重要であることがわかります。どの企業でも必須とも言え、私の体感としても中小企業でもほぼ100%必須ともいえる分野でしょう。

他、重要な要素としては、「コンピュータ」「確率」「図形と空間」「方程式」と続いていきます。

「行列」や「ベクトル」では一部部署では扱うものの、皆が必要というわけではなさそうです。

 

特に大切な部署がある算数・数学とは

今度は「特に大切な部署がある」という順に並び変えたデータです。

引用:企業の算数・数学教育への期待 : データに基づく予測の強調と指導法の改善(瀬沼 花子)

実は、一位は「微積分」です。苦手な数学の分野の代表格とされる微分と積分がトップにランクインということで。2位は相変わらず統計学。意外に思われるかもしれませんが、3位は三角関数、確率、指数関数、図形と方程式、などと続きます。

特に、微積分や三角関数、指数関数・対数関数、ベクトル、数列、行列は、一般的に全員が必要ではないものの、特に重要な部署があるという割合が多いということがわかります。(特に大切な部署がある割合が高いにも関わらず、大切ではない割合が多い、ことから推測。)一言で言えば、全員に必要ではない分野ということです。必要な方のみ習得すればよいかと思います。

もちろん、専門書は微分積分だらけなので、何をやっているかということは理解していたほうがよいかとは思いますが、問題は具体的には解ける必要はあまりないと思います。

データを見る上での注意点と示唆

もちろん、このデータは一部の企業におけるアンケート調査ではありますし、必ず一般的にすべて当てはまるという話ではありませんのであしからず。

実はこの論文には、こんな記載があります。

「一方わが国においては,社会における数学の必要性に関する調査は非常に数少ない.また,わが国の数学学習指導要領には,数学を学んだ ことが将来生きる上で、職業上でどう生きるのかといった観点が明確には示されていない.」

引用:企業の算数・数学教育への期待 : データに基づく予測の強調と指導法の改善(瀬沼 花子)

非常に考えさせられます。

当然、AI、人工知能の活用の流れから統計学の学習の見直しが進んでいるのは非常によいのはいいものの、それ以外の視点がほぼないように見受けられます。

よりよい変化をもたらせるように、数学の有用性や面白さを伝えられるように引き続き伝える活動を継続していきたいと思います。

引用:企業の算数・数学教育への期待 : データに基づく予測の強調と指導法の改善(瀬沼 花子)

<文/堀口智之>