8月10日、筑波大学の熊谷恵子先生をゲストにお呼びして、「大人の算数障害を考える会」を開催いたしました。youtubeで公開もさせていただきました。予想以上に80名以上の方のお申込みをいただきました。
私も主催者ではありますが、大変勉強になりました。
こちらに公開しておりますのでぜひご覧ください。一部編集して改めて公開したいと思っております。
さて、熊谷先生の「算数障害」に関するお言葉で、印象に残る言葉がいくつかありました。そのうちの一つをご紹介したいと思います。
強みを活かすことは大事
印象的な言葉としては、「強みを生かしていくことは大事。」という言葉がありました。
確かにその通りです。子供の算数障害において、算数を克服すると考えるより、算数以外の得意なこと、強みをいかに活かしていくのかは非常に大切なことです。他の得意な科目があることによって、自己肯定感を育むこともできます。
思い出すのは、私が大学生の頃、学習塾でアルバイトをしていたときに出会った中学2年生の男子生徒のことです。
分数の1/2がどうしても理解してもらえず、1/2だけで1時間くらい解説をして、それでもわかってもらえなかったとき、自分の無力さと共に、「この生徒には、数学は向いていない。」と確信を得たのを思っています。もちろん、私の指導の実力がなかったといえばそれまでです。しかし、他の生徒に比べて極端にできなく、「どうやったらよかったのか。」今でもふと思い出してしまうくらい衝撃でした。おそらくその生徒にとってみれば、まず数字から逃れて生きて、得意なことで成功体験を得て、自信を身に着けたほうがよいと思います。数学と向き合うことは、自分のできなさと常に向き合う行為です。決して良い気分ではないはずです。
しかし、動画でもお話していますが、大人の方で数学の習得が全くできないような人とは会ったことはないです。その違いはどこにあるのか。おそらく、これまでの経験量の差と、モチベーションの差によって生まれているように感じます。どの大人の方も、レベルの差はあれど、確実に数学の授業でレベルアップしています。これは実感として間違いないことです。
「強みだけ活かせばよい」で許せられないこともある
しかし、大人だと、「強みを活かせばよい。」という言葉で済ませられないこともあります。強みだけで生きれるわけでもありません。「社会人」ですから、ある程度自分の力だけで生きていかなければいけないこともあります。
数学、特に算数領域は、生きる力そのものです。算数ができなければ、やはりお金の計算もできないですし、世の中のあらゆる”お得”トラップやリスク管理ができない結果につながってしまいます。やりたくないことや苦手なことと向き合っていかなければいけないこともあります。
だからこそ、数字が苦手な人でも逃げるのではなく、向き合って乗り越えられる場があることの大切さを感じます。
私も大学生の頃、強みだけを活かせばよい、と考えていました。しかし、あまりにできない分野があると、その部分を完全に他の人にゆだねることになります。依存があることは決して悪いことではありませんが、どんなに苦手であってもそこに理解があったほうがよいと思います。
経営をしている人で数字が苦手であっても、全く経営の数字を見ていない人は一人もいません。人にゆだねていたとしても、必ず見なければいけないものなのです。「責任」があるとき、苦手を超越した、「義務」が産まれるのです。
強みを活かす。のは非常に大切です。自己肯定感を育てます。しかし、同時にどこかで弱みと向き合わなければいけないタイミングもある。
そんな風に学びを得ながら、考えていました。続きはまた今度に書きたいと思います。
<文/堀口智之>