こちらの記事に掲載させていただくコラムは、「数学ゴールデン」2巻発売記念として、ヤングアニマルZEROに掲載させていただいたものになります。担当者様のご厚意により、掲載させていただけることとなりましたのでぜひご覧ください。
あなたは「規則」に満たされている
生まれながらにある好奇心。その好奇心は、様々な物事の「規則性」を見つけ出すことでしょう。
「曇ってきたら、そろそろ雨が降る。」「目の前で電車が行ってしまったらしばらくは来ない。」「新幹線の席が2列と3列という規則的に配置されている」・・・などなど。我々は規則と共に生きています。
例えば、「朝起きてから、夜寝る」というパターンを繰り返しています。「今日はいつ寝よう?」なんて考えなくても、夜になればごく自然に眠くなってきます。人の身体自体が「規則的」にできているのですね。手を胸に当てれば心臓の鼓動という一定のリズムを感じることができます。そう考え始めると、規則性なく生きていくことすらできないということに気づくでしょう。
町へと出かければ、歩道や信号があり、横断歩道の白線が一定の隙間を繰り返しながら並べられ、信号がある時間経過と共に赤から青へと変わっていきます。左足、右足を前に出すというパターンを繰り返しながら歩くと、一定のリズムに沿って息を吐く、吸う、を繰り返していることに気づくでしょう。
ちょっと疲れたら喫茶店に入って休憩しましょうか。メニューにあるコーヒーのサイズと値段の関係を眺めてみてください。SからMにサイズアップするのに+50円。そして、MからLにサイズアップするのに、また+50円だとしたら、それはもう「規則」ですね。50円追加で支払えば、サイズアップする。もうワンサイズアップしてXLを注文するには、Lの値段に50円追加で支払えばよいのでは?なんて発想も生まれてきます。
ふと公園を散歩して木を見上げれば、葉っぱがたくさんついていることに気がつくでしょう。そこにはどんな規則があるのか。こう考えてみたらどうでしょう。木に葉っぱがある理由は”光合成をする”ため。つまり、日が出て沈むまでの間、あらゆる角度から太陽の光が照らしていく中で、太陽光をできる限り多く吸収するために葉っぱがあると考えると、「規則」が見えてくるのではないでしょうか。つまり、枝に同じ角度にばかり葉っぱが付くというよりは、できるだけ葉っぱが重ならない角度で葉っぱがついたほうが良さそうですね。実は、その角度の背景に「黄金比φ」(φ≒1.618・・・)が隠されていたりすることも。
実は、数学には究極の「規則性」がたくさん詰まっています。規則を学ぶために数学を学んでいると言っても過言ではありません。なぜなら、規則を体系化したものが数学だからです。数学の問題を見ていると、様々な規則がある問題ばかり考察していることに気づくのではないでしょうか。例えばこんな数字の列を眺めてみてください。
2,5,8,11,14,・・・
次の数字は?と聞かれればきっと17でしょう。3つずつ数が増えていますから。これは等差数列と言われており、数列の分野で最初に習う代表的なものです。次はどうでしょう。
1,2,4,8,16・・・
となれば次の数字は32。次の数になるにしたがって、倍になっていることがわかりますね。これは等比数列と呼ばれます。
しかし、規則性が見えないようなものも多いように感じるかもしれません。例えば、今日の最高気温。毎日の最高気温を並べてみれば、そこには「ランダム」に見える数字がたくさん現れます。気温がちょっと高めの日もあれば、低めの日もある。しかし、安心してください。実はそんな中にも規則性は見出せます。その方法は、「平均値」を取ることです。おおよそ月の最高気温の平均は去年とほとんど同じ値になるのです。
人が病気になるのも突然であって、規則性がないように思えるかもしれませんが、「確率」としては決まっています。たった一人がどうなるかは不確定ですが、1億人いたら、明日何人が病気になるかはほぼ予測可能です。集団に法則性を見出すのが「統計学」であり、数学の一分野です。
もちろん、完全に不規則に見える動きをするようなものもあるかもしれません。人の心も難しいですよね。「やっぱり女心はわからない。」なんて一言で片づけるものではもったいないものです。今わかっている「規則性」を少しずつ集めることで、「不規則」にも対処ができます。
彼女が「数学ゴールデン」が好きだ。とわかれば、「数学ゴールデンの最新刊見た?」なんて、一言声をかけてあげれば会話もきっと弾むはず。少しずつ規則を見つけていきながら、不規則な心と向き合っていくのです。
過去にどんなパターンがあったのか。その様々なパターンを知ることでもしかしたら未来が少し、わかるかもしれません。全部わかるなんて言いません。一部の規則でもわかれば、まずは大きな一歩です。人生とは、よりよく社会や人を理解するための「規則性」を見つけるゲームの一種と考えると、より楽しく日常を歩めるはず。そんな規則を学ぶ大切さを、数学は教えてくれているのです。
さらにコラムを読みたい方へ
「数学ゴールデン」単行本2巻が2021年2月26日に発売!このコラムではない、堀口執筆の2つのコラムもこちらの単行本内に収録されています。ぜひご購入頂き、ご確認ください。
今回掲載させていただいた担当者様の懐の深さに心より感謝です。
参考リンク
・数学ゴールデン 2(ヤングアニマルコミックス) (日本語) コミック – 2021/2/26
藏丸 竜彦 (著)