大人向けの数学教室をやっていく中で、気づきました。
お客様が最も恐れていることがあります。
それは、自分が「わからない」ということを発言をすることです。
なぜなら、これまで子どものときに「わからない。」と何度も答えてきて、それが相手が望む答えではないとわかっていても、現にわからないからそう答えなければいけない状況を経験したからです。「わかりません。」という言葉は魔法のように自分を苦しめます。
せっかく大人になってから数学を学びたいと決意したお客様に、「わかりません。」の連呼でやる気をなくさせたくありません。
だから「わかりますか?」と露骨に聞くやり方は実はあまりよくありません。
しかし、教育現場では多くの「わかりますか?」という質問が飛び交っています。「わかりますか?」はわかる人にはとてもよい質問ですが、「わからない」人にはしてはいけない質問です。特に個別授業では、相手に直に届いてしまいますので、質問をしないように気を付けています。
どんな質問なら「わからない」を回避できるか
だから、なるべく回避するように普通じゃない質問をしています。それは、こんな質問です。
「どの部分が難しいですか?」
「もっと知りたいところはどこですか?」
と質問することです。つまり、わからないことを前提に難しい部分を聞いてしまったり、わからないとは答えなくてもなんとなく答え方から察して会話を続けていくやり方です。これなら聞きやすいし、答えやすいかと思います。
「平方完成のあたりが難しくて・・」
と具体的な場所を示せばよいだけですので、「わかりません」と答えるよりは精神的な負担は少なくなるはず。
でも、わかるorわからないかは相手にはきちんと言わなければ伝わらないところもあるので、もちろん、限界はあると思います。わかるのかわからないのかでやはり講師としては対応が変わってきます。現状を明確にするという意味での「わかりません。」はやはり重要です。
「わからない」を大切にする
だから、創業当初からの大人のための数学教室の考え方として「”わからない”を大切にする」というのをコンセプトにしているわけです。
これであれば、「わからない!」という発言に対してポジティブに捉えることができます。なぜなら、「わからない。」からわかろうとするし、好奇心はわからないものにこそ生まれると思うのです。
私自身もまだまだ「わからない。」ことだらけです。でも「わからない」からこそ学ぼうと思えるし、世の中を好奇心を持って、楽しく学び続けながら生きることができています。
本来あるべきは、「わからない。」を誇りに思える社会です。そんな社会を目指して、これからも活動を続けていきます。
<文/堀口智之>