データリテラシー教育を全社へ広げるときは、数字を作る人、読む人、決める人に分けて対象と順序を決めます。全員へ同じ内容を同時に配ると、必要のない範囲まで時間を使う部署と、足りないまま終わる部署が同時に出ます。部署によって扱う数字の種類が違うため、一つの到達点をそのまま全社に当てはめることもできません。
この記事では、対象の絞り方と、第1段階でそろえる範囲を紹介します。以下の件数・割合の設定は、説明用に作成した架空のものです。
全社展開の前に、数字を使う業務を洗い出す
先に集めるのは、各部署が毎月出している資料の一覧です。何の数字が載っているか、誰が作り、誰が読み、誰の判断に使われるか。この4つを1行ずつ書き出します。
洗い出すと、同じ名前の指標が複数の部署で使われていることや、ある部署だけが独自の集計をしていることが見えます。対象を決める前にこの一覧があると、どの範囲をそろえる必要があるかを部署名で示せます。範囲の整理にはデータリテラシーの用語解説が使えます。
対象の絞り方:作る人・読む人・決める人で分ける
同じ数字に関わっていても、役割によって必要な範囲が違います。作る人は集計の手順と定義、読む人は分母と比較の基準、決める人はその数字では何を判断できないかです。
一人が複数の役割を持つこともあります。その場合は、時間を多く使っている役割で分類します。役割で分けると、同じ部署の中でも受ける内容が変わります。部署単位で一律に配る形にするか、役割単位で配る形にするかを、最初に決めておきます。
第1段階は、共通の用語と基準をそろえる
最初に配る範囲は、部署をまたいで同じ意味で使う必要があるものに絞ります。割合の分母の置き方、前年比と増加率の区別、中央値と平均の使い分け、パーセントポイントと%の違い。この範囲は、どの部署でも同じ意味で通用します。
逆に、部署固有の指標の計算方法は第1段階に入れません。共通の土台がないまま個別の指標を扱うと、部署ごとの説明が続いて全社の話に戻れなくなります。第1段階の到達点は、他部署の資料を読んで分母を指摘できることに置きます。
何を第1段階に入れるかは、洗い出した資料の一覧から決めます。複数の部署の資料に共通して出てくる数字の種類が、そのまま共通の範囲になります。1つの部署にしか出てこない数字は、第2段階以降へ回します。
部署ごとの違いは、指標の定義で確認する
説明用の架空の例です。ある月、提出後に数値の根拠を確認し直した件数を数えました。A部署は提出60件のうち6件で 6÷60×100=10%、B部署は提出20件のうち6件で 6÷20×100=30%でした。
この2つを単純に平均すると(10+30)÷2=20%ですが、全体では 12÷80×100=15%です。分母の80件は、A部署の60件とB部署の20件を合わせた提出件数の合計です。単純平均と全体の差は5パーセントポイントあります。分母の大きさが違う率は、単純平均しても全体の率と一致しません。全社の数字を作るときに常に起きる問題です。平均の扱いは平均値の用語解説で確認できます。
なお、この計算からB部署の理解度が低いと判断することはできません。提出件数が少ない部署では、1件の増減が率を大きく動かします。率と件数を、そろえて並べて見ます。
進み具合を、資料の点検で確認する
確認は、テストの点ではなく提出された資料で行います。率に分母が添えられているか、何と比べた数字かが書かれているか、%とポイントが区別されているか。この3点を同じ基準で点検します。
点検には、実施の前と後で同じ種類の資料を使います。月次報告なら月次報告どうしを比べます。様式を変えた月は、その変更を記録しておきます。様式の欄が増えて書き方がそろった場合と、書き手が判断してそろえた場合は、別の記録として残します。
点検の結果は、個人ごとではなく資料の種類ごとに集計します。個人の評価に使うと、資料の書き方が点検を通すための形に寄り、実際に読みやすくなったかが分からなくなります。
次の部署へ広げる判断の材料
次に広げるかどうかは、先行した部署の記録から決めます。点検で直った項目、直らなかった項目、実施にかかった社内の時間、現場から出た質問の内訳。この4つを並べます。
直らなかった項目は、教育の内容だけが原因とは限りません。様式に欄がない、元データが締め切り後に届く、権限がなくて元データを確認できない。仕組み側の原因なら、次の部署へ広げる前に直します。広げる順序は、資料の量が多い部署からではなく、他部署がその数字を参照している部署から決めると、共通の基準が早くそろいます。共通の土台として扱う範囲と実施形態を確かめるなら、和からの統計研修で内容を確認できます。部署固有の指標の定義づけは社内で決める作業になるため、研修で扱う共通部分とは分けて進めてください。
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