来期の予算に根拠を持たせるときは、前年実績の分解、増減の要因、前提と打ち手の区別の順に整えます。前年比で一律に伸ばした数字は、どの前提を動かせば変わるのかを示せないため、会議で一度詰められると戻せなくなります。一方で、細かく積み上げれば通るとも限らず、全体の目標と合わない積み上げは差の説明を求められます。
この記事では、前年実績を件数と単価に分解して来期の数字を組み立てる手順を紹介します。以下の金額・件数の設定は、説明用に作成した架空のものです。
「前年比◯%」で作った数字が詰められる理由
前年1,200万円に対して来期を1,320万円と置いた場合、前年比は 1,320÷1,200×100=110.0%です。ここで分母に置いた1,200万円は、前年1年間の売上実績です。この計算自体は正しく、資料としても成立します。
詰められるのは、次の3つに答えられないときです。110.0%の内訳は件数が増えるのか単価が上がるのか、その増加は誰が何をして起こすのか、届かなかったときはどの前提が外れたことになるのか。率だけの数字は、この3つに答える材料を持っていません。
答えやすくするには、率を実数へ戻します。1,320万円と1,200万円の差は120万円です。この120万円が件数から出てくるのか、単価から出てくるのかを決めるところから始めます。
前年実績を、件数×単価に分解する
最初に、前年の1,200万円を件数と単価に割ります。400件で1,200万円なら、平均単価は 1,200÷400=3万円です。商品が2種類あるなら、種類ごとに分けます。
- A商品:300件×2.5万円=750万円
- B商品:100件×4.5万円=450万円
- 合計:400件で1,200万円、平均単価は 1,200÷400=3万円
この平均単価3万円は、2種類を合わせた結果として出た値です。A商品とB商品の構成が変われば、値引きをしなくても平均単価は動きます。前年比の根拠を求められたとき、戻る先はこの内訳です。分母の置き方については前年比の用語解説もあわせて参照できます。
増減の要因を、数量・単価・構成に分ける
来期を440件、平均単価2.9万円と置きます。件数は 440÷400=1.1で10%の増加、単価は値引きを織り込んで2.9万円としました。売上は 440×2.9=1,276万円、前年比は 1,276÷1,200×100=約106.3%です。
単価を3万円のまま置けば 440×3=1,320万円で110.0%になります。差は44万円、率では約3.7パーセントポイントです。件数を10%増やしても、単価が0.1万円下がれば売上の伸びは約6.3%にとどまります。
構成の影響も同じ形で確かめます。増えた40件がすべてA商品なら、A商品340件・B商品100件で合計は 340×2.5+100×4.5=1,300万円、平均単価は 1,300÷440=約2.95万円です。値引きをしなくても平均単価は3万円を下回ります。なお、売上の見込みが立っても、利益が同じ割合で増えるとは限りません。
積み上げた数字を、全体との整合で確かめる
積み上げた数字は、全体の目標と並べます。合計が目標に届かないとき、差を各担当へ均等に割り戻すと、根拠のない上乗せが積み上げの中に混ざります。差は差として一行で示し、どの前提を変えれば埋まるかを書きます。
確かめ方は2つです。件数の合計が、対応できる人数や設備の範囲に収まっているか。単価の前提が、進行中の値引き交渉と矛盾していないか。ここが合わないときは、積み上げの数字ではなく前提のほうを直します。
前提と、変えられる打ち手を分けて書く
資料では、前提と打ち手を別の行に置きます。前提は自分では動かせないもの、打ち手は自分で決めて実行するものです。市場の需要、為替、原材料の調達条件は前提で、訪問件数、案内する商品の組み合わせ、値引きの上限は打ち手です。
分けて書くと、期中の会話が変わります。前提が外れたのか、打ち手を実行しなかったのかを、期末を待たずに確認できます。前提と打ち手を混ぜた資料は、達成しても未達でも原因を特定できません。
説明の順序:前提、根拠、幅
説明は、前提、根拠、幅の順に並べます。前提は件数と単価をどう置いたか、根拠はその置き方を支える実績や進行中の商談、幅は前提が上下したときに数字がどこまで動くかです。会議での数字の出し方は会議で使う数字のまとめでも整理しています。
幅は、置いた前提のうち1つだけを動かして見せます。単価を2.9万円から3万円へ戻すと1,276万円が1,320万円になる、という形です。複数の前提を同時に動かすと、どれが効いたのかが分からなくなります。
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