製造現場の数字を報告するときは、分母に何を置くか、率と個数のどちらも書くか、工程ごとに分けるかを先に決めます。同じ日の同じラインでも、投入数を分母にするか完成数を分母にするかで不良率の値は変わります。率が下がったことだけでは、失われた個数が減ったとも言えません。
この記事では、不良率と歩留まりの計算と、上へ報告するときの書き方を紹介します。以下の個数・割合の設定は、説明用に作成した架空のものです。
現場の数字は、分母の取り方で意味が変わる
現場で使う率は、ほとんどが何かを何かで割った値です。割る相手を分母と呼びます。分母が違えば、同じ出来事でも違う数字になります。
報告の前に決めるのは、分母にする数、集計する期間、数える単位の3つです。個数で数えるのか、重量で数えるのか、ロットで数えるのかもそろえます。割合の基本は割合の用語解説で確認できます。
分母を変えるときは、過去の数字も同じ分母で計算し直します。片方だけ新しい分母にすると、前の月との比較がそのまま使えなくなります。
不良率:投入数を分母にするか、完成数を分母にするか
説明用の架空の例です。ある日、1,000個を投入し、良品が950個、不良が50個でした。投入数を分母にすると、不良率は 50÷1,000×100=5.0%です。分母の1,000個は、その日ラインに流した個数です。
完成した良品950個を分母にすると、50÷950×100=約5.3%になります。差は約0.3パーセントポイントです。同じ50個の不良でも、分母を変えれば率は変わります。どちらを使うかは社内で1つに決め、資料には分母を書き添えます。
歩留まり:良品数を投入数で割り、工程ごとに分ける
歩留まりは、良品数を投入数で割った値です。先の例なら 950÷1,000×100=95.0%です。投入数を分母にそろえた場合に限り、不良率5.0%と足して100%になります。
工程が複数あるなら、工程ごとに投入数と良品数を記録します。通しの歩留まりだけを見ていると、どの工程で落ちているかが分かりません。工程ごとの数字がなければ、対策を打つ場所も決められません。
工程ごとに出すときの分母は、その工程の投入数です。前の工程から流れてきた個数が投入数であり、ライン全体の投入数ではありません。すべてを全体の投入数で割ると、後ろの工程ほど数字が低く出ます。
工程が続く場合、歩留まりは掛け算になる
工程が3つあり、それぞれの歩留まりが95%の場合を計算します。通しの歩留まりは 0.95×0.95×0.95=約0.857、つまり約85.7%です。投入1,000個なら、工程を通る個数は次のように減ります。
- 第1工程:1,000×0.95=950個
- 第2工程:950×0.95=902.5個
- 第3工程:902.5×0.95=約857個
各工程では5.0%ずつの不良でも、通しでは約14.3%、個数では約143個が失われます。5×3=15%と足した値とは約0.7パーセントポイント違います。工程ごとの率を足し算で見積もると、実際とずれます。ただし、この計算からどの工程を先に直すべきかまでは決められません。工程ごとの不良の中身を併せて見ます。
率と件数を、同じ報告に並べる
報告には、率と個数を両方書きます。「不良率が5.0%から4.0%へ下がりました」だけでは、投入数が変わっていた場合に個数の増減が分かりません。投入1,000個で5.0%なら50個、投入1,500個で4.0%なら60個で、率は下がり個数は増えています。
逆に、個数だけでも判断できません。不良40個という数字は、投入500個なら 40÷500×100=8.0%、投入2,000個なら 40÷2,000×100=2.0%です。投入数、良品数、不良数、率の4つを同じ行に並べます。率と実数の並べ方は割合の読み方のガイドにまとめています。
期間の長さも書き添えます。1日の数字と1か月の数字では、不良1個が率に与える影響が違います。投入数が少ない日は率が大きく動くため、日ごとの率だけで傾向を判断しないようにします。
上に報告するときの一文の形
報告は、確認できた事実と、これから確認することを分けて書きます。原因を推定で書かず、いつまでに何を確認するかを添えます。
今週の第2工程は、投入950個に対し良品902個で、歩留まりは約94.9%でした。
不良は48個で、前週の40個から8個増えています。
不良率は 48÷950×100=約5.1%、前週は 40÷1,000×100=4.0%で、約1.1パーセントポイントの上昇です。
原因は未確認です。工程別の不良の内訳を、明日までに確認します。
この形なら、率と個数、分母、期間が1つの報告に入ります。原因の断定が入っていないため、確認の結果が出てから対策を決められます。現場の数字を読む手順を担当者の間でそろえるなら、データの読み方を扱う和からの法人研修で範囲を確認できます。研修で扱える共通の範囲と、自社の工程ごとの不良の定義は、分けて確認してください。
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