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少人数学級の効果、そのエビデンスを示す

先日、少人数学級にすれば数学においてある程度のリスクを抑えられるという記事を書きました。(参考:集団授業に100%満足は無理ゲー

たしかに、明らかに10人以下となると、一人ひとり見ることができますが、30人と40人でどこまで大差あるかどうか、というのがあまりピンときませんでした。

調べてみたところ、少人数学級の実現に関しては肯定的な意見が多くを占めています。そのエビデンスはどこにあるのか。いくつかここに示します。

 

少人数学級の学力向上、そのエビデンスは

例えば、アメリカでの少人数学級でのデータからすれば、「学級規模」の縮小によって、成績向上が統計的に有意に示されています。しかし、アメリカの学級規模は、通常「22~25人」⇒縮小させると、「13~17人」程度を意味しているということで、日本でやろうとしている、「30人未満」にするのとは規模感が違いますのでその点は注意が必要です。日本は30人未満のクラスを目指しているようですので、「20~40人」⇒「15~29人」という形だと思います。(参考:米国における学級規模縮小の効果に関する研究動向

また、2007年のある報告書によれば、30~40人前後だと明らかに統計的有意と示せるわけではなさそうですが、少人数であればあるほど成績が高くなるような結果も示されているようです。(参考:学級規模が授業に与える影響に関する実証的研究: 小学校における教員調査を中心に

さらに、教員向けのアンケートとなると「切望」する声が多く、教育新聞(2020年8月13日)の記事、意識調査によると、学校教員の96.6%が少人数学級を求めているという結果が出ています。96.6%はほぼ全員と言ってもよいくらい多くの教員が求めているということです。30人中29人が賛成というレベルです。(引用:少人数学級に96.6%が「賛成」 公立校の教員、本紙調査

良好な人間関係が作れたり、学習面でのサポートがよりできるようになる、保護者や家庭との連携がしっかりとれるようになるなど、教員への負担を減らすような方向で期待している声が多いようでした。

ただ、「学力以外」については効果はあっても、「学力」に関しては明確な効果を示すエビデンスがないという専門家もいるようです。

たしかに、統計学を用いた分析には注意が必要です。データの抽出方法、その取り方一つで全く結果が変わってしまう場合や、第3の因子が影響を与えてしまい少人数学級と学力における相関関係が見かけ上のものだけであった、という可能性もあります。また初めから結論が決まっている場合などといった、結果への中立的な立場も信頼性という意味では大切な要素の一つです。

 

統計トリックのようにも感じる

教員向けのアンケートの結果を見ても肯定的な意見が多いように思いましたが、同時に、統計学、アンケートを用いたトリックのようにも感じました。

馬に乗っている時代は、全員がより速い馬を求めた。なんてエピソードを思い出しました。つまり、「速い馬は欲しいですか?」と聞かれたら、「イエス」としか答えようがないと思います。そんな質問はたくさんあります。必要なのは、馬ではなく、車かもしれません。

「お金欲しいですか?」と言われれば、お金を欲しいとほぼ全員が答えるでしょう。「お金があれば欲しいものを買える。経済が回る。精神的に安心する。」など言いようはあります。

つまり、大事なのは、そこに向けてどのくらい大変なのかです。費用対効果が大切なのです。実現のためにどのくらいの労力、費用がかかり、どのくらいの効果、意味があるのかを考えなければいけません。

個人的な実感としては、人数が少なければ少ないほど授業はやりやすいです。個人個人に目が向く頻度も多くなり、明らかにやりやすくなってきます。しかし、経営者目線から言えば、それによって費用も多くかかってしまい、効率性が失われるのは避けたいところです。

この考察については後日再度記事を書いていきたいと思います。

今、少人数学級の実現に向けて大きく教育業界が動き出しています。

<文/堀口智之>